【10/22】比例復活の厳格化とは|得票6分の1と定数31減の与党案

【10/22】比例復活の厳格化とは|得票6分の1と定数31減の与党案

衆院の選挙制度をめぐる与野党の協議会で、2026年10月22日、自民党の鈴木馨祐座長が現行制度の修正案(与党案)を各党に示しました。柱は3つあります。小選挙区で敗れた候補が比例代表で復活当選するのに必要な得票を「有効投票数の10分の1」から「6分の1」に引き上げること、比例の名簿に載せた候補者が足りない党の議席を他党に回さず欠員にすること、そして比例代表の定数を31減らすことです。この記事では、比例復活の厳格化とは何か、与党案を現行制度と比べると何が変わるのか、なぜ定数は45減から31減になったのか、誰が影響を受け、野党はどう反応しているのかを、FNN・日本経済新聞・東京新聞・時事通信・読売新聞の報道をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 比例復活の厳格化:復活当選に必要な小選挙区の得票を、有効投票数の10分の1から6分の1へ引き上げる案です。
  • 定数31削減:自民・維新の連立合意にある比例45削減から、野党に譲歩して削減幅を縮めた形です。
  • 今後の見通し:各党は10月末までに修正案をまとめる方針ですが、野党は定数削減に反対で一致しており、取りまとめは難しいとの見方も出ています。
目次

比例復活の厳格化とは何か

小選挙区で負けた候補が比例代表で当選し直す「復活当選」の条件を、今より厳しくすることです。

衆院選では、同じ候補が小選挙区と比例代表の両方に立候補(重複立候補)できます。小選挙区で敗れても、比例の名簿で上位になれば当選できるのが比例復活です。ただし今の制度でも、小選挙区での得票が一定の線に届かなかった候補は復活できません。FNNはこの線を現行の「有効投票数の10分の1」と伝えており、10月22日に鈴木座長が示した修正案は、これを6分の1に引き上げる内容でした。重複立候補と比例代表の当選の決まりは公職選挙法に定められています(e-Gov法令検索・公職選挙法)。

テレビ報道では、小選挙区で敗れた候補が比例で当選し直すことを「ゾンビ復活」と呼ぶ見出しも出ています(ABEMA、10月20日・21日)。今回の見直しは、こうした批判に応える形で、復活の入口を絞るものです。

得票の下限を10分の1から6分の1へ引き上げる

復活当選できる最低ラインが、有効投票の1割から約17%に上がる案です。

たとえば有効投票が20万票の小選挙区なら、今は2万票あれば復活の資格が残りますが、6分の1になると約3万3,000票が必要になります(編集部の計算)。この引き上げは野党からも提案されていた内容だとFNNは伝えています。東京新聞によると、10月15日の会合でも自民党が復活当選の基準の厳格化を提唱し、野党の一部から賛同する意見が出ていました。

候補者が足りない党の議席は他党に回さず「欠員」に

比例で得た議席が名簿の候補者数を上回ったとき、余った議席を他党に渡さず空席にする案です。

今の制度では、ある党が比例で得た議席に対して名簿の候補者が足りなくなると、その議席は他の党に割り振られます。修正案はこれをやめ、欠員とするものです。時事通信によると、この項目は8月10日に鈴木座長が示した試案にもすでに入っていました。

2つの見直しの中身がわかったところで、与党案全体を現行制度と並べてみます。

与党案を現行制度と比べると何が変わるのか

変わるのは、復活当選の下限、余った議席の扱い、比例代表の定数の3点です。

FNNが報じた修正案の中身を、今の制度と並べると次のとおりです。

項目 今の制度 10月22日の与党案
比例復活の下限 小選挙区の有効投票数の10分の1 6分の1に引き上げ
名簿の候補者が足りないとき 余った議席を他党に割り振る 他党に回さず欠員にする
比例代表の定数 据え置き 31削減(自民・維新の連立合意は45削減)

表のうち、上の2つは野党も受け入れる余地がある項目で、争点として残るのは一番下の定数削減です。

今回の修正は「抜本改革までのつなぎ」

与野党は、2030年2月までの抜本改革とは別に、それまでの解散に備えて今の制度を一部手直しすることで合意しています。

FNNによると、与野党は今の衆院議員の任期が満了する2030年2月までに選挙制度を抜本的に改革すること、そして任期満了までに解散・総選挙となった場合に備えて現行制度を一部修正することで、すでに合意しています。今回の与党案は後者の「一部修正」にあたります。抜本改革の議論は別に進むため、今回の案だけで選挙制度の形が最終的に決まるわけではありません。

では、なぜ争点の定数削減は45ではなく31になったのでしょうか。

なぜ定数削減は45から31になったのか

連立合意の45削減から、定数削減に反対する野党に一定の譲歩をした結果だと報じられています。

FNNは、修正案に比例定数の31削減が含まれたことについて、定数削減に反対する野党に一定の譲歩をした形だと伝えました。日本経済新聞も10月21日、自民党が衆院定数を31減らす案を野党に打診したと報じ、今国会での実現に向けて野党の協力を探る狙いがあるとしています。

自民・維新の連立合意は「比例45削減」

自民党と日本維新の会は、連立政権の合意で比例代表を45議席減らすとしていました。

両党が共同で国会に出した定数削減法案も45減を定めた内容で、衆院で継続審議になっています。31減は、この合意から14議席分、削減幅を小さくした数字です。経緯は「衆院定数31減とは|鈴木幹事長の「腹案」と45減の差」で詳しく整理しています。

鈴木幹事長の「31」発言から正式な提示まで

31という数字は、10月上旬に鈴木俊一幹事長が会見で口にし、一度撤回したものです。

日本経済新聞によると、鈴木幹事長は10月上旬の会見で、国民民主党が唱える人口減に合わせて定数を減らす考え方に触れ、削減幅として31に言及しましたが、のちに撤回しました。その数字が、10月22日の協議会で座長の修正案として正式に示されたことになります。

次に、比例復活の厳格化で実際に誰が影響を受けるのかを見ます。

比例復活の厳格化で影響を受けるのは誰か

小選挙区で得票が伸びにくい中小政党の候補ほど、復活当選の道が狭くなるとみられます。

得票の下限は小選挙区ごとの有効投票に対する割合なので、小選挙区で大きく票を取る大政党の候補は引っかかりにくく、影響は小選挙区で勝ちにくい新しい党や小さな党に集まりやすい構図です。

参考として、日本経済新聞は8月17日、8月時点の厳格化の案を前回の衆院選に当てはめた試算を報じ、見出しで参政党の復活当選が14人から1人に、チームみらいが4人から1人になるとしました。ただし、この試算が6分の1の下限だけを当てはめたものか、8月の試案にあった惜敗率の基準も組み合わせたものかは記事の有料部分にあり、本記事では確かめられていません。10月22日の与党案をそのまま当てはめた結果ではない点に注意してください。

(編集部分析)小選挙区で有権者に選ばれなかった候補が比例で当選し直す仕組みには、「ゾンビ復活」と呼ぶ報道があるように批判もあります。下限を引き上げること自体は、小選挙区の民意をより重く見る方向として評価できます。ただし、同じ時期に比例の定数まで削れば、既成の大政党に属さない新しい保守系の政党が議席を得る入口も細くなります。誰が得をするのかを問えば、議席を持つ大政党に有利な見直しにならないか、注意して見る必要があります。

野党は与党案にどう反応しているのか

野党各党は、抜本改革を議論する前に定数を減らすことに反対する姿勢で一致しています。

FNNによると、各党は今月末までに現行制度の一部修正案をまとめる方針ですが、野党は抜本改革の前の定数削減に反対で一致しており、今月末の取りまとめは難しいとの見方も出ています。東京新聞が伝えた10月15日の会合での主な発言は次のとおりです。

党・人物 10月15日の会合での主張(東京新聞)
自民・鈴木馨祐氏 定数について結論が出ない合意は考えにくい
維新・金村龍那氏 定数問題に踏み込んで決着させたい
国民民主・古川元久氏 今回の見直しは抜本改革までのつなぎで、現行定数を維持すべき
公明・中野洋昌氏 比例定数45削減は全く受け入れられない。合意できる点をまとめるべき
民主改革の会・落合貴之氏 相当の工夫をしなければ議論がかみ合わない

表のとおり、与党は定数の決着を求め、野党は定数に触れずに合意できる部分だけをまとめたいという立場で、10月15日の時点では平行線でした。31減の提示は、この溝を埋めるための一手ということになります。

サンラグ式という別の論点も出ている

比例の議席配分を、中小政党が議席を得やすい「サンラグ式」に変える案も協議で出ています。

読売新聞によると、10月20日の会合では、今のドント式より中小政党が議席を得やすいサンラグ式の導入案が出ました。チームみらいが提案し、国民民主党が賛意を示しています。ドント式は各党の得票を1、2、3……で順に割り、商の大きい順に議席を配る方式です。サンラグ式は割る数を1、3、5……と奇数にするため、得票の多い党ほど次の議席を取りにくくなり、その分が中小政党に回りやすくなります。与党内にも、定数削減とセットなら導入を認めるという意見があり、鈴木馨祐氏は記者団に、与野党が合意したうえで削減になれば「様々な考え方が出てくる」と述べ、含みを持たせました。

ここまでの動きを、時間の順に並べ直します。

選挙制度の協議はどう進んできたのか

8月の座長試案から始まり、10月末の取りまとめに向けて、22日に与党案が示された段階です。

主な節目は次のとおりです。

8月10日
鈴木座長が試案。比例復活の下限6分の1を検討、惜敗率30%・50%の基準も例示。定数は「保留」(時事通信)
9月28日
報告書案から定数の「削減」の文言が消え、10月末をめどに結論を得る方針に
10月15日
与党が45削減を改めて主張、野党は反対で平行線(東京新聞)
10月20日
第3回会合。次回に折衷案を示すことで合意、サンラグ式の案も出る(読売新聞)
10月22日
鈴木座長が与党案を提示。比例復活6分の1・欠員・比例31削減(FNN)
10月末
一部修正案の取りまとめの目標(取りまとめは難しいとの見方も)
2030年2月
今の衆院議員の任期満了。それまでに抜本改革

図のとおり、比例復活の厳格化は8月の試案から一貫して残ってきた項目で、定数だけが「保留」「文言削除」「31減」と揺れてきました。9月28日の動きは「衆院定数削減の「削減」が消えた|10月末結論で何が決まるか」で詳しく書いています。

保守の立場から見た与党案の意味

復活当選の見直しは筋が通る一方、定数削減と抱き合わせにすれば新しい政党の芽を摘むおそれがあります。

与党案は、野党も受け入れやすい比例復活の厳格化と欠員の扱いに、争点の定数削減を組み合わせた形です。FNNが伝えるとおり、31減は45減からの譲歩ですが、野党は「抜本改革の前に定数を減らすべきではない」という立場を崩していません。

(編集部分析)議員定数の削減は、維新などが「身を切る改革」として訴えてきた政策です。しかし削られるのが比例代表だけであれば、小選挙区で勝ちにくい新しい党、とくに既成政党に飽き足らない保守層の受け皿となってきた政党ほど議席を失いやすくなります。選挙の仕組みを決めているのは、今その仕組みで当選している議員自身です。だからこそ、国民の声が議席に届く入口を狭めていないかを、数字で確かめながら判断する必要があります。復活当選の厳格化は民意を重く見る改革として前に進めつつ、定数削減は抜本改革の中で、議席配分の方式も含めて正面から議論するのが筋だと考えます。

今後の注目点:10月末にどこまでまとまるか

10月末の取りまとめで、定数削減を含むかどうかと、比例復活の厳格化だけが先に決まるかが焦点です。

これから自分で確かめるときは、次の順に見るのが近道です。

  • 次回の協議会:与党案に対する野党の回答が出るかどうか。各党の実務者の発言は会合の当日に報じられます。
  • 定数の扱い:31減が取りまとめに残るのか、定数を外して比例復活の厳格化などだけで合意するのか。
  • 法案の形:修正には公職選挙法の改正が要ります。今国会に法案が出るか、臨時国会の会期末(12月12日)までに審議が進むかを見ます。
  • サンラグ式:定数削減とセットで導入する案が与党内でどこまで広がるか。

取りまとめの結果が出た時点で、この記事に追記します。

比例復活の厳格化のよくある質問

本文で触れきれなかった周辺の疑問をまとめます。

Q. 下限に届かず復活できない候補が出ると、その議席はどうなるのですか?

A. その候補は比例の当選者になれず、議席は同じ党の名簿で次の順位の候補に回ります。名簿に回せる候補がいなくなったときの扱いを「他党へ」から「欠員」に変えるのが、今回の与党案のもう一つの柱です。

Q. 惜敗率の基準は与党案に入っていますか?

A. 8月の座長試案では惜敗率30%・50%の基準が例示されましたが、10月22日の与党案を伝えるFNNの報道には惜敗率の記載はありません。

Q. 比例の31削減はどのブロックで何議席減るのですか?

A. 10月22日時点の報道では、ブロックごとの内訳は示されていません。内訳が明らかになった時点で追記します。

情報は2026年10月22日時点のものです。最新の動きは下の参考情報で確かめてください。

参考情報

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