【9/27】岩屋前外相が企業役員50人と訪中|国貿促の狙いと「なぜ今」批判の論点
自民党の岩屋毅前外相が、会長を務める日本国際貿易促進協会(国貿促)の代表団を率いて、9月27日に北京へ入りました。日本企業の役員ら約50人が同行し、30日まで滞在して習近平指導部の要人との面会を求めています。
昨年11月の高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁以降、日中関係は冷え込んだままで、中国では日本人の拘束も続いています。そのため「なぜ今、前外相が経済界を連れて北京へ行くのか」という批判も出ています。この記事では、訪中の中身、国貿促という団体、批判される理由、今後の焦点を出典つきで整理します。
この記事でわかること
- 訪中の中身:岩屋前外相が国貿促の会長として、企業役員ら約50人と9月27日から30日まで北京を訪れています。要人との面会は、27日時点で決まっていません。
- 国貿促とは:日中友好7団体の一つで、中国との貿易・経済交流の窓口を担う団体です。前会長は6月に死去した河野洋平元衆院議長です。
- 批判の理由:高市首相の答弁をめぐって中国が日本への渡航自粛を呼びかけ、日本人の拘束も続く中での訪中だからです。
岩屋前外相の訪中はいつ・誰と・何のためか
岩屋氏は国貿促の会長として、9月27日から30日まで企業役員ら約50人と北京を訪れ、日中の経済交流の立て直しを探っています。
時事通信によると、国貿促の代表団は27日に北京に到着しました。岩屋氏らは習近平指導部との面会を求めており、日本企業の役員ら約50人が参加しています(時事通信、2026年9月27日)。訪中の中身を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 日程 | 9月27日〜30日(北京) | 時事通信 |
| 団体 | 日本国際貿易促進協会(国貿促)の代表団 | 共同通信 |
| 団長 | 岩屋毅前外相(7月に国貿促会長に就任) | 共同通信 |
| 同行 | 日本企業の役員ら約50人 | 時事通信・共同通信 |
| 面会の希望 | 習近平指導部の要人(27日時点で未定) | 時事通信・日本経済新聞 |
| 前回の訪中 | 2025年6月、河野洋平前会長の代表団が李強首相と会談 | 日本経済新聞 |
表のとおり、今回の訪中は政府の代表団ではなく、民間の経済団体の代表団という形をとっています。ただし団長は、1年前まで外相を務めていた現職の自民党衆院議員です。
岩屋氏が羽田で語った訪中の目的
岩屋氏は出発前、関係が厳しい時こそ対話で改善の道を探ることが大事だと述べ、目的は経済交流の円滑化だと説明しました。
共同通信によると、岩屋氏は27日に羽田空港で記者団に「日中関係が厳しい時こそ、対話を通じて改善の道を探ることが大事だ」と述べ、中国政府の要人と会えれば「率直に意見交換したい」と語りました(共同通信、2026年9月27日)。日本経済新聞は、岩屋氏が「民間の立場から日中関係の発展や改善に向け微力を尽くしたい」と述べ、日中関係を「極めて厳しい状況」と見ていると伝えています(日本経済新聞、2026年9月24日)。
当初6月の予定が9月にずれた理由
訪中は6月の予定でしたが、前会長の河野洋平元衆院議長が直前に亡くなったため、9月に延期されました。
共同通信によると、6月には会長代行の橋本岳元厚生労働副大臣らが少人数で訪中し、中国外務省の華春瑩次官と会談しました。その後、9月中下旬の訪中に向けて日程を組み直し、今回の日程になりました。岩屋氏は9月24日、東京都内で開かれた中国の国慶節(建国記念日)を祝うレセプションで訪中を発表しています(共同通信、2026年9月24日)。
日本国際貿易促進協会(国貿促)とはどんな団体か
国貿促は、中国との貿易・経済交流の窓口を担う民間団体で、「日中友好7団体」の一つに数えられています。
時事通信は国貿促を日中友好7団体の一つと紹介し、過去に中国指導部との会談を重ねて日中外交の一翼を担ってきたと伝えています(時事通信、2026年9月25日)。代表団は例年訪中しており、日本経済新聞によると、2025年6月には当時会長だった河野洋平氏の代表団が李強首相と会談しました。
会長が変わった経緯を並べると、次のとおりです。
国貿促の会長交代と訪中の流れ
流れを見ると、今回の訪中は岩屋氏が会長になって初めての訪中で、団体として毎年続けてきた行事の延長にあたります。
国会議員の訪中は今回だけではありません。9月には日中友好議員連盟の訪中団も話題になりました。その顔ぶれは「日中友好議連の訪中団メンバー」の記事で整理しています。
なぜ「このタイミング」の訪中が批判されているのか
高市首相の答弁のあと中国が日本への渡航自粛を呼びかけ、日本人の拘束も続く中で、前外相が経済界を連れて訪中したためです。
高市首相の答弁から日中関係は冷え込んだまま
2025年11月の高市首相の答弁以降、中国は日本への渡航自粛を呼びかけ、日中の経済界の交流も止まっています。
高市首相は2025年11月の衆院予算委員会で、台湾有事が存立危機事態になり得ると答弁しました。中国外務省は11月14日、日本の指導者が台湾について「露骨に挑発する発言」をしたとして、国民に日本への渡航を控えるよう呼びかけました(時事通信、2025年11月15日)。共同通信は今回の訪中について、この答弁以降「日中経済界の交流は停滞して」いると伝えています。
日中の対立は、その後も続いています。9月23日には、高市首相が国連憲章の旧敵国条項の削除を求めたのに対し、中国が反論しました。詳しくは「旧敵国条項の「現実的意義」とは」をご覧ください。
中国で拘束された日本人の問題は片付いていない
中国では2014年の反スパイ法の施行後、少なくとも17人の日本人が拘束され、2026年5月にも新たに2人が拘束されました。
日本経済新聞によると、反スパイ法の施行後に拘束された日本人は少なくとも17人で、このうち12人が懲役3年から15年の実刑を受けています(日本経済新聞、2025年7月29日)。2023年に拘束されたアステラス製薬の男性社員も、懲役3年6か月の実刑が確定しました。
2026年5月には大連で、電源系の半導体や機器を扱う日系大手企業の日本人社員2人が、国家輸出入禁止貨物密輸の疑いで拘束されました。木原稔官房長官は「邦人保護の観点から適切に対応する」と述べ、中国外務省の副報道局長は、日本は在中国の日本人に中国の法律を守らせるよう教育すべきだと求めました(時事通信、2026年6月24日)。
拘束をめぐる数字を表にまとめます。
| 項目 | 内容 | 時点・出典 |
|---|---|---|
| 反スパイ法の施行後の拘束 | 少なくとも17人 | 2025年7月・日本経済新聞 |
| うち実刑 | 12人(懲役3〜15年) | 2025年7月・日本経済新聞 |
| アステラス製薬の社員 | 2023年3月に拘束、懲役3年6か月 | 日本経済新聞 |
| 2026年5月の拘束 | 大連で日系大手社員2人(密輸の疑い) | 2026年6月・時事通信 |
表の17人は反スパイ法をめぐる数字で、5月の2人は密輸の疑いという別の容疑です。今回の代表団がこれらの拘束について中国側に何かを求めるのかは、27日時点で報じられていません。
岩屋毅氏の経歴|元防衛相で前外相
岩屋氏は大分県別府市出身の自民党衆院議員で、安倍内閣で防衛相、石破内閣で外相を務めました。
首相官邸の閣僚名簿によると、岩屋氏は2018年10月に発足した第4次安倍改造内閣で防衛大臣に就き、2024年10月の石破内閣で外務大臣になりました(首相官邸「防衛大臣 岩屋毅」、首相官邸「外務大臣 岩屋毅」)。外相は2025年10月の高市内閣の発足まで務め、今は無役の衆院議員です。
防衛と外交の両方の大臣を経験した議員が、民間の経済団体の会長として北京に入る形です。SNSや解説動画の一部には、安全保障の責任者だった人物が経済の話をしに行くことを問題にする声もありますが、広がりを測った調査はありません。なお、国貿促が岩屋氏を会長に選んだ理由は、報道では詳しく説明されていません。
岩屋氏の外相時代の対中姿勢
岩屋氏は外相だった2024年12月、中国との相互訪問を進めるため、中国人向けビザの発給要件を緩める方針を打ち出しました。
日本経済新聞は2024年12月25日、岩屋外相が北京でのハイレベル対話に出て、中国人向けビザの発給要件の緩和を表明する見通しだと報じました。申請手続きの簡素化などで、中国が11月に日本人向けの短期ビザ免除を再開したことへの対応とされました(日本経済新聞、2024年12月25日)。SNSには、こうした経緯から今回の訪中を「中国寄り」とする投稿も見られますが、その広がりを示す調査はありません。
訪中を支持する見方と批判する見方
対話の窓口を残すべきだという見方と、政府の方針と足並みがそろわず相手に誤った合図を送るという見方に分かれています。
出発前の岩屋氏の説明と、一部のSNS投稿や解説動画に見られる批判の主張を、編集部で並べると次のようになります。
| 論点 | 岩屋氏の説明(報道) | 一部のSNS・動画に見られる主張 |
|---|---|---|
| 時期 | 関係が厳しい時こそ対話が要る(岩屋氏) | 政府が毅然とした姿勢を示している最中に水を差す |
| 経済 | 経済交流の円滑化と発展を図る | 経済を優先すると相手に足元を見られる |
| 拘束邦人 | 出発前の発言では触れていない | 関係改善の前に拘束された日本人を取り戻すべき |
| 立場 | 「民間の立場から」微力を尽くす | 前外相で現職の与党議員なので、日本の意思と受け取られる |
表の左は共同通信と日本経済新聞が伝えた岩屋氏の発言、右は一部のSNS投稿や解説動画に見られる主張を編集部で整理したものです。右の主張がどれだけ広がっているかを測った調査はなく、世論の代表とは言えません。
(編集部分析)対話の窓口を残すこと自体は外交の基本で、それを否定する必要はありません。問題は順番と中身です。中国は渡航自粛の呼びかけなどの措置を続け、日本人の拘束も解けていません。その中で日本側が何も引き出さないまま経済界を連れて訪ねれば、「圧力をかければ日本は歩み寄る」という誤った合図になりかねません。訪中するのであれば、拘束されている日本人の早期解放を最初の議題に置くべきだと考えます。
政府の外交と議員の訪中はどう違うのか
今回の訪中は民間団体の活動で、政府を代表して交渉するものではありませんが、前外相で与党議員のため、中国側の位置付けも焦点です。
岩屋氏は「民間の立場から」と説明しており、代表団は国貿促という民間団体の枠で動いています。一方で岩屋氏は前外相で、現職の自民党衆院議員です。中国側が誰を面会に出すかによって、この訪中の重みは大きく変わります。
政府と議員の動きを比べると、次のとおりです。
| 見る点 | 政府(高市政権) | 国貿促の代表団(岩屋氏) |
|---|---|---|
| 台湾有事の答弁 | 撤回していない | 訪中の説明では触れていない |
| 立場 | 国を代表して交渉する | 民間団体として意見交換する |
| 発言で確認できる論点(編集部整理) | 邦人保護(5月の拘束で官房長官が言及) | 経済交流の円滑化(岩屋氏の説明) |
表は、報道で確認できる発言を編集部で並べたものです。(編集部分析)政府と代表団で重点が違う以上、相手に「日本の中にも別の声がある」と使われない工夫が要ります。国益の観点では、議員の訪中も政府の方針と矛盾しない形で行い、何を話したかを帰国後に国民へ説明することが欠かせません。与党の中から別の窓口が開くと、政府の交渉力が弱まるおそれがあるためです。
日中関係をめぐる与党内の声は一つではありません。中谷元前防衛相が高市政権に求めた注文は「中谷元氏が高市政権に3つの注文」で整理しています。
訪中の焦点|誰と会えるか・何を持ち帰るか
焦点は、30日までに中国の要人と会えるか、そして拘束邦人や輸出規制で何か前進を持ち帰れるかの2点です。
中国側が誰を面会に出すか
中国側が誰を面会に出すかで、中国がこの訪中をどう扱っているかが分かります。
2025年6月の代表団は李強首相と会談しましたが、今回は27日時点で面会相手が決まっていません。日本経済新聞は、中国側が応じるかどうかが注目されると伝えています(日本経済新聞、2026年9月27日)。(編集部分析)前年は首相が会っているため、今回の面会相手の肩書きとの違いは、中国側の姿勢を見る比較材料の一つになります。ただし、肩書きだけで中国側の意図を断定することはできません。
拘束邦人と輸出規制に触れるか
代表団が拘束された日本人や、中国の対日輸出規制について何を話したかも、帰国後の説明で確かめたい点です。
JBpressは、5月の拘束について、中国が対日輸出を規制しているレアアース(希土類)の加工品を国外に持ち出そうとした疑いだと伝えています(JBpress)。輸出規制は、日中の経済交流の論点の一つです。(編集部分析)経済交流の話をするなら、日本企業の社員が安心して働ける条件、つまり拘束の理由の説明と早期解放を求めることが、国益にかなう訪中の最低条件と考えます。会談の結果が出たら、この記事に追記します。
結果はどこで確かめればよいか
会談の中身は、代表団の帰国後の記者対応と、国貿促や外務省の発表で確かめるのが確実です。
民間団体の訪中は、政府の会談と違って外務省が記録を出すとは限りません。そのため、帰国する30日前後の岩屋氏の発言、同行した企業の発表、中国外務省の定例会見での言及を合わせて見る必要があります。SNSや動画では「何も成果がなかった」「大きな成果があった」と両方の強い言い方が出やすいので、面会相手の肩書きと、拘束邦人や輸出規制に触れたかどうかの2点が報道で確認できるかを見るのが、判断の近道です。
岩屋前外相の訪中のよくある質問
訪中の立場や日程について、よく聞かれる点をまとめます。
Q. 中国政府はこの訪中にどう反応していますか?
A. 本記事の出典の範囲では、27日時点で中国外務省の公式な反応は確認できていません。面会の相手が決まれば、その扱いが反応の目安になります。
Q. 同行した約50人はどこの企業ですか?
A. 報道では「日本企業の役員ら約50人」とされ、企業名は27日時点で公表されていません。
面会の相手や会談の中身は、今後の報道で変わることがあります。
参考情報
- 時事通信「貿易団体代表団が訪中 岩屋前外相、北京入り」(2026年9月27日)
- 共同通信「岩屋前外相ら訪中、関係改善探る 国際貿易代表団」(2026年9月27日)
- 日本経済新聞「岩屋前外相らが訪中 貿易代表団、関係改善探る」(2026年9月27日)
- 日本経済新聞「自民党・岩屋毅前外相、27日訪中へ 関係修復の機運醸成はかる」(2026年9月24日)
- 時事通信「岩屋前外相、27日訪中 要人との会談調整」(2026年9月25日)
- 共同通信「岩屋前外相、27日から訪中へ 関係冷え込みの中」(2026年9月24日)
- 時事通信「中国、日本への渡航回避を通知 高市首相の台湾有事発言、報復か」(2025年11月15日)
- 日本経済新聞「中国で拘束邦人7割が実刑 懲役3〜15年、アステラス社員も確定」(2025年7月29日)
- 時事通信「中国、5月に邦人2人拘束 電機大手社員、禁止貨物密輸容疑で」(2026年6月24日)
- JBpress「【中国で邦人拘束】アステラス製薬事件では予想より軽い判決、関係悪化中の今回は『揺さぶり』の材料にされる懸念」
- 日本経済新聞「岩屋毅外相、中国人向けビザの発給要件緩和を表明へ」(2024年12月25日)
- 首相官邸「防衛大臣 岩屋毅(第4次安倍改造内閣)」
- 首相官邸「外務大臣 岩屋毅(石破内閣)」
