【10/5】酒々井町の盛り土崩落はなぜ|締め固め不足と千葉4か所の共通点

台風25号の大雨で、千葉県酒々井町(しすいまち)の住宅地「開運団地」の近くにあった盛り土が崩れ、排水路の馬橋川(まばしがわ)をふさぎました。行き場を失った水が住宅地に流れ込み、台風から2週間近くたっても冠水が続いています。千葉県によると、台風25号で盛り土が崩れた場所は県内で4か所あります。

日本テレビの「追跡取材 news LOG」は、静岡大学の専門家の見方として、土を重機で押し固める「締め固め」が不十分だった可能性を伝えました。この記事では、酒々井町で何が起きたのか、盛り土はなぜ崩れたのか、なぜ撤去されずに残っていたのか、盛土規制法で何ができて何が残っていたのかを、報道と千葉県の公表資料をもとに整理します(2026年10月5日6時時点の情報です)。

この記事でわかること

  • 何が起きたか:酒々井町馬橋の盛り土が台風25号の大雨で崩れて馬橋川をふさぎ、開運団地の住宅10世帯以上が床上浸水しました(東京新聞10月1日の報道時点)。
  • なぜ崩れたか:静岡大学防災総合センターの北村晃寿センター長は、土の粒の間に水が入る隙間があったこと自体が「締め固めが十分でなかった」ことを示すと指摘しています。
  • なぜ残っていたか:町は2016年9月以降の被害を受けて業者に撤去を求めましたが、業者は資金難を理由に応じず、町は2026年2月に一部の盛り土で行政代執行に着手したところでした。
目次

酒々井町の盛り土崩落で何が起きたか

酒々井町馬橋の盛り土が台風25号の大雨で崩れて馬橋川をふさぎ、開運団地の住宅地が冠水しました。

読売新聞によると、崩れたのは馬橋川の近くにあった盛り土で、崩れた土が川の流れをふさぎました。開運団地の入口の道路はおよそ120メートルにわたって水につかり、水深が1メートルを超える場所もあります。町はポンプ車7台で排水を続けています(9月30日の報道時点)。

報道で確認できた基本的な事実を、次の表にまとめます。

項目 内容 伝えた媒体
場所 千葉県酒々井町馬橋、開運団地の近く(馬橋川沿い) 読売新聞、東京新聞
きっかけ 台風25号の大雨。9月21日夕方から冠水が始まった 東京新聞
浸水 10世帯以上が床上浸水、床上1メートルまで水が来た家もある。20人以上が避難所で生活 東京新聞(10月1日の報道時点)
崩落現場 盛り土の崩落現場は2か所。車2台が土砂に巻き込まれ、太陽光パネルの一部も崩れ落ちた 日テレNEWS(news LOG)
道路の冠水 団地の入口の道路が約120メートルにわたり冠水、水深1メートル超の場所あり 読売新聞(9月30日の報道時点)
排水 ポンプ車7台で排水。町は住民に「復旧まで最大3カ月」と説明 読売新聞、東京新聞

表のとおり、被害は「盛り土が崩れた場所」そのものより、崩れた土が排水路をふさいだことで住宅地側に広がっています。東京新聞の9月29日の現地取材では、台風から1週間たっても水は引かず、むしろ水位が上がっていたと伝えています。

10年前にも同じ場所で冠水していた

日テレの取材では、この場所は10年前にも盛り土が崩れて住宅地が冠水しており、今回は同じ被害の繰り返しです。

読売新聞も、町の話として「同様の被害は2016年9月以降、複数回発生している」と伝えています。浸水した住民からは「起こるべくして起きた」(千葉日報)、「人災だ」(東京新聞)という声が出ています。

盛り土はなぜ崩れたのか?専門家は「締め固め」不足を指摘

専門家は、水が入り込めるほど土の粒の間に隙間があったことから、締め固めが不十分だった可能性を指摘しています。

日テレの「追跡取材 news LOG」は、崩落現場で車が土砂に沈み込んでいる状況に注目しました。静岡大学防災総合センターの北村晃寿センター長は、水がたくさん入って軟弱になっているとしたうえで、水が入って崩れるのは粒子と粒子の間に水が入るだけの隙間があるからで、「そのこと自体が、締め固めが十分でなかったということになります」と述べています。

「締め固め」とは何か

締め固めは、盛り土を重機などで押して圧力をかけ、土の粒どうしの隙間を減らして強度を上げる作業のことです。

土をただ積み上げただけでは、粒と粒の間に空気や水の入る隙間が多く残ります。日テレの報道では、この「重機などで圧力をかけて強度を上げる」作業が不十分だった可能性があるとしています。ただし、酒々井町の盛り土がどのように造られたかを調べた公式の結果は、10月5日時点で発表されていません。原因は「専門家の見方」の段階です。

水が入ると盛り土はどう崩れるのか

隙間の多い盛り土に大雨が染み込むと、土が水を含んで軟らかくなり、重みに耐えられず崩れやすくなります。

専門家の説明を順番に並べると、次の流れになります。

図解:締め固めが不十分な盛り土が崩れ、住宅地が冠水するまで

1. 土を積んだだけで、粒と粒の間に隙間が残る(締め固め不足)
2. 台風の大雨が隙間に入り込み、盛り土が水を含んで軟らかくなる
3. 重みに耐えられず崩落し、土砂が車や太陽光パネルを巻き込む
4. 崩れた土が排水路(馬橋川)をふさぐ
5. 行き場を失った水が住宅地へ流れ込み、冠水が長引く

図のとおり、酒々井町では「崩れたこと」と「排水路をふさいだこと」の2つが重なって被害が大きくなりました。崩れた土そのものよりも、水の出口を失ったことが冠水を長引かせています。

なぜ危険な盛り土は撤去されなかったのか

町は業者に撤去を求め続けましたが、業者は資金難を理由に応じず、町が代わりに撤去する手続きの途中で崩れました。

読売新聞によると、馬橋川の周辺には盛土規制法ができる前から複数の盛り土があり、町は土を運び込んだ複数の業者に撤去を求めてきました。しかし業者は資金難を理由に応じていません。日テレも、町が撤去を要請したものの事業者が応じなかったため、行政代執行で撤去する予定だったと伝えています。

町の撤去要請と行政代執行の経緯

町は2026年2月に一部の盛り土で行政代執行に着手しており、今回崩れた盛り土もその検討対象でした。

行政代執行は、義務を果たさない人に代わって行政が作業を行い、かかった費用を後から本人に請求する仕組みです。読売新聞によると、町は2月に一部の盛り土で代執行を始めており、崩れた盛り土も代執行を検討していたところでした。危険だと分かっていた盛り土が、撤去の順番を待つ間に崩れたことになります。

(編集部分析)日テレは、危険な盛り土の撤去は本来業者が対応すべきものだと伝えています。業者が応じないまま代執行に進めば、作業はいったん行政が公費で行い、費用は後から業者に請求することになります。業者は資金難と報じられており、実際にどこまで回収できるかは分かっていません。専門家が「すべてを行政が対応するのは難しい」と述べたのは、この構造を指していると考えられます。

盛り土が積まれた時期は報道で食い違っている

盛り土が積まれた時期は、東京新聞が「2001年ごろから」、千葉日報が「2016年9月から翌年1月」と伝えており、一致していません。

東京新聞は、2001年ごろから民間業者が許可を得ないまま土を盛ってきたと報じています。一方、千葉日報は、2016年9月から2017年1月にかけて事業者が大量の土を盛り、その後の大雨で何度も崩れたと伝えています。読売新聞は「同様の被害は2016年9月以降」としています。複数の盛り土がある場所なので、それぞれ別の盛り土を指している可能性もあります。町や県が正式な経緯を公表した時点で確かめる必要があります。

千葉県内の盛り土の崩落全体がどうなっているのかを、次で見ていきます。

Q. 盛り土を積んだ業者の名前は公表されていますか?

A. 10月5日時点の報道では、業者の名前は明らかにされていません。読売新聞は「複数の業者」が土を運び込んだと伝えています。

業者の責任の扱いは、行政代執行の費用請求とあわせて今後の焦点になります。

千葉県内で盛り土崩落は4か所、どこで起きたか

千葉県によると、台風25号で盛り土が崩れた場所は県内で4か所です。報道で場所が分かっているのは3か所です。

読売新聞が9月29日時点で県に取材した内容によると、4か所の中には、規制が始まった後に無許可で造られた盛り土や、行政代執行を検討していた盛り土が含まれています。場所が報じられている3か所を、次の表にまとめます。

場所 盛り土ができた時期 行政の対応 崩落による被害
酒々井町馬橋 盛土規制法の施行前 業者に撤去を要求、2026年2月に一部で行政代執行に着手 馬橋川をふさぎ開運団地が冠水
袖ケ浦市大竹 規制が始まった後に無許可で造成 県と市が昨年7月以降、複数回撤去を指導したが業者が応じず 土砂が市道と水田に流入
袖ケ浦市川原井 規制が始まる前に造成 熱海の土石流後の盛り土総点検で「災害防止措置が未実施」と指摘されたが撤去されず 土砂が近くの民家の1階に流入、住人は2階に避難
4か所目 報道で特定できず 報道で特定できず 報道で特定できず

表の3か所はいずれも、行政が危険を把握して撤去や対策を求めていたのに、業者が応じないまま台風を迎えています。4か所目の場所は、10月5日時点で読売新聞・日テレの報道からは特定できませんでした。

袖ケ浦市の2か所は「規制の前」と「規制の後」

袖ケ浦市川原井は規制前に造られた盛り土、袖ケ浦市大竹は規制が始まった後に無許可で造られた盛り土です。

日テレの報道でも、4か所のうち酒々井町を含む2か所は規制法ができる前に積まれて行政が危険性を指摘していたもの、袖ケ浦市の1か所は規制法ができた後に無許可で積まれたものと整理されています。つまり、「法律ができる前の古い盛り土」と「法律ができた後の違法な盛り土」の両方が崩れています。

(編集部分析)規制の前と後の両方で崩れたことは、法律を作るだけでは盛り土の危険は消えないことを示しています。古い盛り土は撤去を命じる相手が資金難で動かず、新しい盛り土は無許可で積まれて指導にも従わない。どちらも、最後に止める手段が行政の現場で実際に使えるかどうかが問われています。

盛土規制法は千葉県でいつから?規制前の盛り土はどう扱われるか

千葉県は2025年5月26日に規制を始めました。規制前からある危険な盛り土も、勧告や改善命令の対象になり得ます。

盛土規制法(正式名は宅地造成及び特定盛土等規制法)は、2021年に静岡県熱海市で起きた大規模な土石流をきっかけに作られ、2023年5月26日に施行されました。千葉県のホームページによると、県は2025年5月26日に県内全域(千葉市・船橋市・柏市を除く)を「宅地造成等工事規制区域」に指定し、規制を始めています。除かれた3市は、それぞれの市が手続きの窓口です。

許可の対象と罰則

規制区域で盛り土や切り土、土を一時的に積んでおく工事をするには、知事の許可が必要です。無許可の工事には重い罰則があります。

千葉県によると、無許可の工事には最大で懲役3年以下または罰金1,000万円以下、法人には最大3億円以下の罰金が科されます。読売新聞も、違反した法人の罰金は最大3億円と伝えています。

主な中身を表にまとめます。

項目 内容
法律の施行 2023年5月26日
千葉県の規制開始 2025年5月26日(県内全域。千葉市・船橋市・柏市は各市が担当)
許可が必要な工事 規制区域での盛り土・切り土、土石の一時的な堆積など
無許可工事の罰則 最大で懲役3年以下または罰金1,000万円以下、法人は最大3億円以下

表のとおり、許可制が直接かかるのは規制が始まった後の工事です。規制前からある盛り土は、許可ではなく、次に見る勧告や改善命令の仕組みで扱われます。

規制前の盛り土は勧告・改善命令で是正するが、追いついていない

規制前の盛り土でも危険があれば是正を命じられますが、総点検で対策が必要とされた盛り土の多くは対策が終わっていません。

国土交通省によると、盛土規制法では土地の所有者などに盛り土を安全な状態に保つ責務があり、知事は危険な盛り土について所有者などに勧告し、改善命令を出すことができます。土を運び込むなど原因をつくった行為者にも、是正を命じることができます。つまり酒々井町のケースは「法律の外にあった」のではなく、是正や撤去が崩落までに終わらなかったケースです。

読売新聞によると、総務省は、総点検で見つかった513か所のうち半数で対策が実施されていないと指摘しています。袖ケ浦市川原井の盛り土も、この総点検で「災害防止措置が未実施」とされながら撤去されていませんでした。日テレの取材で北村センター長は、盛り土の地質や中身を調べて危険度を評価し、対策の順位をつけて、限られた予算から順番に対応する必要があるという趣旨を述べています。

許可制と、すでにある盛り土の是正は別の仕組みで動いており、今回の4か所では是正の遅れが表に出ました。

台風25号で千葉の被害はどこまで広がったか

千葉県では10人が亡くなり、鴨川市では深層崩壊の可能性、印旛沼では堤防4か所の決壊と、被害は県内各地に広がりました。

台風25号による死者は、10月3日時点で千葉県10人・神奈川県5人の計15人です。

共同通信によると、10月3日には千葉県長柄町の土砂崩れ現場で新たに1人の遺体が見つかり、死者は計15人になりました。FNNプライムオンラインは、15人のうち13人が土砂災害で亡くなったと伝えています。台風25号は9月21日に関東を直撃しました。盛り土の崩落は、こうした自然の斜面の土砂崩れとは別に起きた被害です。

鴨川市で指摘される「深層崩壊」とは

深層崩壊は、大量の雨が地下深くまで染み込み、風化した岩盤ごと大規模に崩れる土砂災害で、鴨川市で複数起きた可能性が指摘されています。

FNNプライムオンラインによると、東京都市大学の佐藤剛教授は、台風の大雨に長く続いた雨が重なって斜面に大量の水がたまり、地下深くの地盤が大規模に崩れたとみています。TBSは、鴨川市では台風25号で4人が犠牲になったと伝えています。盛り土の崩落は人が積んだ土の問題、深層崩壊は自然の斜面の問題で、原因の性質が違います。

印旛沼では初めての堤防決壊も起きた

同じ台風25号で、印旛沼の堤防が4か所で決壊し、10月3日に最後の1か所をふさぐ工事が終わりました。

NHKによると、決壊した印旛沼の堤防4か所のうち、最後の1か所をふさぐ工事が10月3日に完了しました。印旛沼の決壊の原因と復旧の流れは「【9/28】印旛沼の決壊は「浸透破堤」か|初の決壊の原因と荒締切、台風26号への備え」で整理しています。千葉県では8月の豪雨でも浸水被害が出ており、その際の堤防の整備の経緯は「【8/20】千葉豪雨とスーパー堤防仕分け|国管理河川の氾濫はゼロだった」にまとめています。

開運団地の冠水はいつ解消するか

町は住民に「復旧まで最大3カ月」と説明しており、冠水がすぐに解消する見通しは立っていません。

東京新聞によると、町はポンプ車をフル稼働させて排水を続けていますが、台風から1週間が過ぎても水は引いていませんでした。日テレの取材に住民は「まず水位を下げないと次にいきません」と話し、排水を最優先で求めています。崩れた土が排水路をふさいでいる限り、ポンプで水をくみ出す作業が続くことになります。

次の雨で何が心配されているか

排水路がふさがったままの状態で次の大雨が来ると、冠水がさらに長引くおそれがあると住民は不安を訴えています。

東京新聞は、住民が今後の雨に「恐怖」を感じていると伝えています。TBSも、台風25号から1週間の時点で次の台風への不安の声を報じていました。崩れた盛り土の撤去と排水路の復旧がいつ終わるかは、町の発表を待つ必要があります。

復旧の見通しは、続報が出しだいこの記事にも反映します。

近くの盛り土が心配なときに確かめること

自宅の近くに盛り土や土を積んだ場所がある人は、県や市町村の窓口に相談でき、斜面の異変に気づいたらすぐ避難することが大切です。

千葉県は盛土規制法の手続きと相談の窓口をホームページで案内しており、規制区域から外れている千葉市・船橋市・柏市は各市が窓口です。無許可で土が運び込まれているように見える場合や、すでに崩れかけている場合は、まず住んでいる市町村か県に連絡するのが近道です。

避難の目安になる斜面の異変

斜面からいつもより多く水が出る、泥水が出る、斜面の下に小石が落ちている、といった変化は避難のサインです。

FNNプライムオンラインの取材で佐藤教授は、こうした前兆を見たらすぐに避難する必要があると述べています。盛り土でも自然の斜面でも、大雨のときに近づいて確かめに行くのは危険です。自治体が出す避難の情報と、ふだんから確認しておいたハザードマップをもとに、早めに動くことが身を守ることにつながります。

酒々井町の盛り土崩落のよくある質問

検索で多く調べられている疑問に、報道と公表資料の範囲で答えます。

Q. 酒々井町の盛り土崩落でけが人は出ましたか?

A. 10月5日時点の報道では、酒々井町の盛り土崩落によるけが人や死者は伝えられていません。被害は車2台の巻き込みと住宅地の冠水が中心です。

Q. 盛り土と切り土はどう違いますか?

A. 盛り土は土を盛って土地を高くすること、切り土は土を削って低くすることです。盛土規制法はどちらの工事も許可の対象にしています。

Q. 熱海の土石流と今回の盛り土崩落は同じ種類の災害ですか?

A. どちらも人が積んだ盛り土が大雨で崩れた点は共通しています。熱海の土石流は盛土規制法ができるきっかけになりました。

原因の公式な調査結果や業者への対応が発表されたら、続報として追記します。

参考情報

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