【10/25】飯山市長選は新家智裕氏が初当選|前回178票差の元副市長が現職に2690票差、争点は駅前ホテル

長野県の飯山市長選挙は10月25日に投開票が行われ、新人で元副市長の新家智裕(にいのみ・ともひろ)氏(67)=無所属=が5945票を得て初当選しました。2期目を目指した現職の江沢岸生(えざわ・きしお)氏(72)は3255票で、2690票の差がつきました。
新家氏は4年前の2022年の市長選で江沢氏にわずか178票差で敗れており、今回は2回目の挑戦でした。前回の接戦から一転、今回は現職に大差をつけての勝利です。選挙では、北陸新幹線飯山駅前の市有地に予定されながら止まったままのホテル計画が大きな争点になりました。
この記事では、開票結果と3候補の経歴、前回2022年との違い、争点になった駅前ホテル計画の経緯、現職が大差で敗れた背景、新しい市政の課題を、NBS長野放送や信濃毎日新聞などの報道と飯山市の資料をもとに整理します。
この記事でわかること
- 結果:新家智裕氏が5945票で初当選し、現職の江沢岸生氏に2690票の差をつけました。
- 前回との違い:2022年は江沢氏が178票差で新家氏を破っており、4年で立場が入れ替わりました。
- 争点:市が5億円を支援する方針だった飯山駅前のホテル計画が、調停や訴訟に発展したまま止まっています。
飯山市長選2026の結果は?新家智裕氏が初当選
新人の新家智裕氏が5945票で初当選し、現職の江沢岸生氏は3255票、常田徳子氏は1508票でした。
選挙は任期満了に伴うもので、10月18日に告示され、無所属の3人が立候補しました。届け出順は新家氏、常田氏、江沢氏です。10月25日に投票が行われ、即日開票されました。NBS長野放送と長野朝日放送が伝えた開票結果は次のとおりです。
| 候補者 | 年齢・立場 | 得票数 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 新家智裕 | 67歳・無所属・新人(元副市長) | 5,945票 | 当選(初) |
| 江沢岸生 | 72歳・無所属・現職 | 3,255票 | 落選 |
| 常田徳子 | 68歳・無所属・新人(前市議) | 1,508票 | 落選 |
新家氏の得票は、江沢氏と常田氏の合計4763票も1182票上回りました。投票率は68.94%で、前回2022年の69.05%を0.11ポイント下回っています。投票率はほぼ同じ水準でしたが、江沢氏と新家氏の票差は大きく広がりました。
当選から一夜明けた新家氏の言葉
新家氏は当選翌日、「これからが新しい飯山をつくるスタート」と述べ、駅前ホテルは推進する考えを改めて示しました。
NBS長野放送によると、新家氏は10月26日に選挙事務所で「投票してくれた皆さんの負託をしっかりと受け止めて、これからの市政運営をしていきたい」と語りました。争点の駅前ホテルについては「駅前に相応しいホテルが必要」と述べ、市職員や関係者からよく話を聞いて、前市政からの転換を図りたいとしています。TBS NEWS DIGも、ホテル建設について新家氏が「よく職員から話を聞いて判断したい」と述べたと伝えています。
新家智裕氏とはどんな人?長野県の土木技術者から副市長
新家氏は飯山市生まれで、長野県庁で河川や道路の仕事を長く担い、その後に飯山市の副市長を務めた人物です。
新家智裕氏の経歴
新家氏は新潟大学で土木を学び、長野県庁で建設事務所長や河川課長を務めたあと、飯山市の副市長になりました。
選挙ドットコムによると、新家氏は新潟大学工学部土木工学科を卒業して長野県庁に入り、北信建設事務所長、建設部河川課長、長野建設事務所長などを務めました。その後、飯山市の副市長として、3期12年務めた足立正則前市長の市政を支えました。足立氏が引退した2022年の市長選に立候補しましたが、江沢氏に敗れています。
告示日の第一声では「飯山駅の前を開発し、この未来への投資をしていきたい」と述べ、人や雇用が生まれる拠点をつくると訴えました(テレビ信州)。当選の夜には「若い人たちが飯山で住み続けたいと思える街づくりを」と語ったと日テレNEWS NNNが伝えています。
江沢岸生氏・常田徳子氏の経歴
現職の江沢氏は国の官僚出身で市議1期を経て市長になり、常田氏は助産師と市職員を経て市議を1期務めました。
選挙ドットコムによると、江沢氏は飯山市生まれで茨城大学人文学部を卒業し、総理府行政管理庁(今の総務省)に入りました。総務庁長官の秘書官や内閣審議官などを務め、2010年に総務省を退職。2014年から飯山市議を1期務め、2022年の市長選で初当選しました。2022年の当選は4回目の挑戦でした(信濃毎日新聞)。
常田氏は飯山市出身で、助産師として3年働いたあと飯山市役所に入り、地域包括支援センター所長や保健福祉課長を務めました。2022年の市議選で初当選しています。選挙戦では子育て支援や市の経済の活性化を訴え、若者が戻れるよう住まいと働く場をつくるとしていました(テレビ信州)。
| 候補者 | 主な経歴 | 選挙戦での主な訴え |
|---|---|---|
| 新家智裕 | 長野県 北信建設事務所長・河川課長など→飯山市副市長 | 飯山駅前の開発、人や雇用が生まれる拠点づくり |
| 江沢岸生 | 行政管理庁(総務省)→飯山市議1期→市長1期 | 草の処理を手伝う「草刈り隊」の結成、泥上げなど |
| 常田徳子 | 助産師→飯山市役所(保健福祉課長など)→市議1期 | 子育て支援、経済の活性化、若者の住まいと働く場 |
3人の訴えを並べると、報道で駅前の開発を重点に訴えたと伝えられたのは新家氏でした。テレビ信州は、争点を「1期4年の現市政の評価」「北陸新幹線・飯山駅前の開発」「子育て支援」と整理しています。
前回2022年の飯山市長選は?江沢氏が178票差で新家氏を破った
2022年の市長選は新人同士の一騎打ちで、江沢氏が当時の前副市長だった新家氏をわずか178票差で破りました。
信濃毎日新聞によると、2022年10月23日の市長選は、3期12年務めた足立正則市長の引退を受けて行われ、12年ぶりに市長が代わりました。投票率は69.05%で、当時の過去最低でした。江沢氏は「市民の声を真剣に聞く姿勢」を訴え、足立市政を支えた新家氏との戦いを制しました。
前回と今回を並べると、次のようになります。
| 項目 | 2022年10月23日 | 2026年10月25日 |
|---|---|---|
| 構図 | 新人2人の一騎打ち | 現職1人と新人2人の三つどもえ |
| 当選者 | 江沢岸生氏(元市議) | 新家智裕氏(元副市長) |
| 江沢氏と新家氏の差 | 江沢氏が178票差で勝利 | 新家氏が2,690票差で勝利 |
| 投票率 | 69.05% | 68.94% |
4年前は「前市政の継続か、刷新か」で刷新が選ばれ、今回は江沢市政の4年が問われて、前市政を支えた側が勝ち直した形です。その4年間の中心にあったのが、次に見る駅前ホテル計画でした。
争点になった飯山駅前ホテル計画とは?
駅前の市有地に建てるホテルを市が補助する計画で、前市政の支援方針を江沢市長が見直してから止まっています。
北陸新幹線の飯山駅は2015年の開業で、駅前には市が持つ土地があります。ここにホテルを誘致する計画は足立前市長の時代に進み、地元の経営者らでつくる「飯山ホテル」が建設と運営を担うことになりました。経緯を順に並べると次のとおりです。
計画は市が方針を示してから5年たっても形にならず、駅前の土地は空き地のままです。ここからは、止まった理由を段階ごとに見ます。
前市政で決まった「15億円のうち5億円を支援」
飯山市が示した方針では、ホテル客室と健康増進施設を備えた施設を、総事業費15億円のうち5億円を市が支援して建てる計画でした。
市の資料によると、事業者は5億円の支援のほかに、開業後の客室の稼働を上げるための補助や、観光客・医療関係者向けの部屋の借り上げなども求めていました。ホテルは市有地に建てる計画で、事業者にとっては市の支援が前提の事業でした。
江沢市長の方針転換と民事調停
江沢市長は前市政の手続きが適切ではなかったとして補助金を出さない方針に変え、事業者は2023年に民事調停を申し立てました。
信濃毎日新聞は2023年8月、飯山ホテルが補助金を交付しない市の方針について「事業者側が一方的に不利益を被る」として飯山簡易裁判所に調停を申し立てたと報じました。江沢氏は、ホテル誘致の検証を掲げて市長になった経緯があります。
調停案の合意、議会の否決、そして提訴
2024年に市と事業者は規模を縮めた調停案で合意しましたが、市議会が否決し、事業者は調停を取り下げて市を訴えました。
NBS長野放送によると、調停では当初8階建てだったホテルを4階建てに変え、市の補助を3億6000万円とすることで合意しました。ただ、調停の成立には市議会の議決が必要で、市長と議会の対立の中で調停案は否決されました。飯山ホテルの寺島勲取締役は「議会で否決されたことで、ホテル建設は正直難しい」と話し、2024年11月までに調停を取り下げました。江沢市長は「一方的に(調停を)取り下げられた飯山ホテルの姿勢については遺憾に感じている」と述べています。
信濃毎日新聞は2024年12月、事業者が市の対応で事業が滞ったとして市に損害賠償を求めて提訴したと伝えました。同じ記事によると、12月14日に市が開いた住民説明会では、市民が市長と議会の歩み寄りと早期の建設を求めました。請求額や、裁判がいまどこまで進んでいるかは、今回の取材では確かめられませんでした。
なぜ現職の江沢氏は大差で敗れたのか?
信濃毎日新聞は、駅前のホテル誘致が止まる中で、開発推進を訴えた新家氏が民意をつかんだと報じています。
以下は報道で確かめられる事実と、編集部の見立てを分けて書きます。
信濃毎日新聞は当選を伝える記事で「ホテル誘致が停滞する飯山駅前、開発推進訴え民意つかむ」との見出しを付けました。告示日の各社の報道でも、争点は「現市政の評価」と「飯山駅前の開発」が真っ先に挙げられています。テレビ信州の告示日の報道では、新家氏が駅前の開発を訴えたのに対し、江沢氏の訴えとして伝えられたのは草刈りや泥上げといった暮らしに近い課題でした。
一方で、信濃毎日新聞の出口調査では、江沢氏の市政運営を「評価する」と答えた人が36%、「評価しない」が31%でした。市政全体への評価は割れていたのに、票では大差がついたことになります。
(編集部分析)市政を「評価する」人が「評価しない」人を上回っていても票が離れたのは、日々の市政への不満より、駅前という1つの大きな課題を動かせる人を選んだ有権者が多かったためとみられます。前回178票差だった勝負が2690票差まで開いたのは、江沢氏の「見直し」が、4年たっても次の形を示せなかったことへの判定と読めます。前市政の手続きを問い直すこと自体は、市民の税金を守る正当な仕事です。ただ、市が一度示した支援方針を転換した結果、空き地が残り、事業者との裁判まで抱えたとなれば、市民の目に「止めただけ」と映るのは避けにくかったと考えられます。
(編集部分析)もう1つは、市長と議会の関係です。調停案は市長と事業者が合意しても、議会が否決すれば成り立ちません。市政のかじ取りには、議会を説得して形にする力が欠かせず、今回の結果は、その力を市民が重く見たことの表れとも評価できます。
同じ日の飯山市議選の結果は?
市長選と同じ10月25日に飯山市議会議員選挙も行われ、19人が立候補して16人が当選しました。
信濃毎日新聞が最終結果を伝えています。新市長にとって、駅前ホテルの調停案を否決した市議会とどう向き合うかは、最初の大きな仕事になります。市議選で選ばれた16人の顔ぶれと、ホテル計画への考え方が、これからの議会の判断を左右します。
新家市政の課題は?駅前ホテルと訴訟の行方
最初の課題は、止まった駅前ホテルを動かすことと、事業者との訴訟をどう収めるかで、その先に人口減少と子育て支援の対策が控えます。
駅前ホテルは「転換」をどう形にするか
新家氏は「駅前に相応しいホテルが必要」と述べ、前市政からの転換を図るとしていますが、具体的な進め方はまだ示していません。
新家氏は当選後、「よく職員から話を聞いて判断したい」と述べています。飯山ホテルとの間では、調停の取り下げと提訴を経て関係がこじれています。同じ事業者と話し直すのか、別の形を探すのか、議会の議決が必要になるのかは、今後の新市長の説明を待つ必要があります。
(編集部分析)新家氏は副市長として計画が決まった時期の市政を支えた当事者です。経緯を知る強みがある一方、前市政の手続きを問題視した江沢氏の指摘にどう答えるかは避けて通れません。手続きの透明性を示したうえで計画を進められるかが、新市政の信頼を左右するとみられます。
人口減少と子育て支援
3人の候補はいずれも人口減少への対策を掲げており、選挙戦の争点には子育て支援も挙がっていました。
新家氏は「若い人たちが飯山で住み続けたいと思える街づくり」を掲げ、駅前を人や雇用が生まれる拠点にすると訴えました。常田氏が訴えた子育て支援や若者の住まいの確保も、飯山市にとって共通の課題です。駅前の開発が、地域にどれだけ人と仕事を呼び込めるかが問われます。
(編集部分析)新幹線の駅を持つ地方の小さな市が、自前の判断で駅前の使い方を決め、地元の資本と組んで拠点をつくることは、地域の自立という意味で大きな意味を持ちます。市長と議会と地元の事業者が対立を越えて1つの形にまとめられるかどうかが、新家市政の4年の評価を決めることになりそうです。
10月25日にはほかの地域でも市長選が行われました。新潟市長選の結果、那覇市長選の結果、栗東市長選の結果、君津市長選の無投票もあわせてご覧ください。
飯山市長選のよくある質問
本文で触れきれなかった点を、短い問答でまとめます。
Q. 新市長の名前「新家智裕」は何と読みますか?
A. 「にいのみ・ともひろ」と読みます。長野県職員を経て飯山市の副市長を務めた67歳です。
Q. 飯山市長の任期は何年ですか?
A. 4年です。地方自治法で市町村長の任期は4年と決まっており、新家氏は次の市長選まで4年間市政を担います。
Q. 飯山ホテルと市の裁判はどうなっていますか?
A. 2024年12月に事業者が市を提訴したと報じられていますが、請求額や判決・和解の有無は今回確認できていません。新市長がこの裁判にどう向き合うかが次の焦点です。
今後の動きは、飯山市の公式サイト(飯山市公式サイト)で確かめられます。新市長の就任会見、市議会での駅前ホテルに関する議案と議決、市が公表する駅前ホテル事業の資料の3つを見ておくと、計画がどちらへ動くかが分かります。
参考情報
- NBS長野放送「飯山市長選、新人の新家智裕氏が初当選」(2026年10月26日)
- 信濃毎日新聞デジタル「【速報】飯山市長選 新家智裕氏が当選」(2026年10月25日)
- 日本経済新聞「長野県飯山市長選挙、新家智裕氏が初当選」(2026年10月25日)
- 信濃毎日新聞デジタル「【飯山市長選】江沢岸生氏が初当選 新家智裕氏にわずか178票差」(2022年10月23日)
- NBS長野放送「駅前のホテル計画めぐり深まる溝 事業者は市を損害賠償を求めて提訴する方針」(2024年11月27日)
- 信濃毎日新聞デジタル「飯山駅前のホテル誘致 市の補助金不交付方針 事業者側が調停申し立て」(2023年8月)
- 信濃毎日新聞デジタル「空き地のままでは…飯山市の新幹線駅前ホテル、1日も早く建設して」(2024年12月14日)
- 飯山市「駅前ホテルに関する対応方針」(PDF)
- テレビ信州、日テレNEWS NNN、長野朝日放送、TBS NEWS DIG、選挙ドットコムの各報道
