【9/26】茂木外相の「名代」外交とは|NYで13件、ルビオ氏とICC制裁協議、ポスト高市の行方

茂木敏充外相が、国連総会に合わせたニューヨークでの外交日程を9月25日に終えました。読売新聞は、茂木氏が高市早苗首相の「名代」として少なくとも13件の会談日程をこなし、首脳外交を補ったと報じています。

なかでも注目されるのが、ルビオ米国務長官との国際刑事裁判所(ICC)を巡る協議です。米国は8月、日本人のICC所長である赤根智子氏を制裁対象に指定しており、日米の間で意見が分かれている問題です。この記事では、茂木外相の「名代」外交で何があったのか、ICC問題の経緯、日米韓外相会合の中身、「ポスト高市」との関係を、報道の出典つきで整理します。

この記事でわかること

  • 名代外交の中身:茂木外相はニューヨーク滞在中に、個別会談を含め少なくとも13件の会談日程をこなしました(読売新聞)。
  • ICCを巡る協議:9月21日にルビオ国務長官と約10分面会し、米国が赤根智子ICC所長らを制裁対象にした件で意見を交わしました。
  • ポスト高市との関係:茂木氏は9月17日の内閣改造で外相に留任し、当面は首相を支えるとの見方が強まっています。
目次

茂木外相の「名代」外交とは何だったのか

首相に代わってニューヨークで多国間会合や個別会談をこなし、首脳外交を外相の立場で補った動きです。

「名代」は、本人に代わって役目を務める人を指す言葉です。読売新聞によると、茂木氏は9月25日、ニューヨークでの国連関連会合への出席など一連の外交日程を終えました。記事は、茂木氏が高市首相の「名代」として世界を飛び回り、米国滞在中も複数の会合をこなして首脳外交の補完に腐心したと書いています(読売新聞)。

共同通信によると、茂木氏は9月18日に、国連総会に出席するため20〜25日の日程でニューヨークを訪れると発表していました(共同通信)。一方、日本経済新聞は、首相のニューヨーク滞在は「1日強」だったと伝えています(日本経済新聞)。首相が短い滞在で演説と首脳級の会談を受け持ち、外相級の多国間会合や各国外相との調整を茂木氏が受け持った形です。

「少なくとも13件」は何を数えた数字なのか

読売新聞の数え方で、多国間の会合と2国間の個別会談の両方を含んだ会談日程の件数です。

読売新聞は「個別会談を含め少なくとも13件の会談日程をこなした」と書いており、多国間会合と個別会談を合わせた読売新聞の集計です。「少なくとも」とあるとおり、立ち話のような短い接触まで含めた総数とは限りません。

ニューヨークで茂木外相は誰と何を話したのか

日米韓や主要7か国(G7)の外相会合、核軍縮、パレスチナ問題の会合に出て、各国外相と個別にも会いました。

報道と、外務省の公式発表を集めたまとめページ(posfie)から、主な会合を分野ごとに並べると次のとおりです。日付は報道で確かめられたものだけを入れています。

分野 会合・相手 報じられた中身
日米(9月21日・現地) ルビオ米国務長官との面会 約10分。ICC制裁、中国を巡る東アジア情勢、イラン情勢で意見交換
日米韓(9月21日・現地) 日米韓外相会合 共同声明。経済的威圧に「断固として反対」、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認
核軍縮 CTBTフレンズ外相会合 共同議長として発言。核実験を禁じる条約の早期発効を呼びかけ
国連改革 G4(日本・ブラジル・ドイツ・インド)外相会合 国連安全保障理事会の改革へ緊密に連携することを確認
海洋 海洋の安全と安定の確保に関する外相会合 法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を訴え
中東(9月24日・現地) 2国家解決の閣僚級会合(国連本部) 「2国家解決の道のりがますます困難になっている」と懸念
島しょ国 フィジー、モルディブの外相と個別会談 2027年の太平洋・島サミットや、来年の外交関係樹立60周年に向けた協力

表のとおり、同盟国との調整から核軍縮、中東、島しょ国まで、首相が一人では回りきれない範囲を外相が受け持っています。G7外相会合への出席は読売新聞が報じています。各会合の正確な日付は、外務省の「外交日程」や各会合の発表ページで確かめられます。

パレスチナ問題で茂木外相は何を訴えたのか

「パレスチナ問題の解決なくして中東に公平で永続的な平和はない」と述べ、国際社会の連携を求めました。

読売新聞によると、茂木氏は9月24日、国連本部でイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」の実現に向けた閣僚級会合に出席しました。アジア諸国のパレスチナ支援の枠組み「CEAPAD(パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合)」を日本が主導してきた取り組みも紹介しています。

ルビオ国務長官とのICC協議とは何だったのか

米国が日本人のICC所長を制裁対象にした問題で、茂木外相がルビオ氏と約10分、意見を交わした面会です。

テレビ朝日によると、茂木氏は9月21日、ルビオ国務長官と約10分間面会しました。ルビオ氏が8月に赤根智子ICC所長らを制裁対象にすると発表したことを踏まえて意見を交わし、法の支配を重視する日本の立場を説明したとみられます。やりとりの具体的な中身は発表されていません(テレビ朝日)。面会では中国を巡る東アジア情勢や、ホルムズ海峡などのイラン情勢についても協議し、日米で緊密に連携することを確認しました(KSB瀬戸内海放送(ANN))。

赤根智子ICC所長への制裁はどう始まったのか

米政府が8月18日に赤根所長らを制裁対象に指定し、日本政府は「大変残念」と述べるにとどめました。

ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、米国は2026年8月18日、2025年2月の大統領令に基づき、赤根所長とICCの上級法廷弁護士を制裁対象に加えました(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)。日本経済新聞は、高市首相が「大変残念に思っている」と述べたことに対し、自国民が制裁対象になったのに弱腰だとの批判も出たと伝えています(日本経済新聞)。

時事通信によると、赤根所長は8月26日の記者会見で「私には制裁を受ける理由は全くないと断言できる」と述べ、日本に「ICCと法の支配を守り抜くための最大限の努力をしてほしい」と求めました(時事通信)。流れを図にすると次のとおりです。

8月18日

米国が赤根所長らを制裁対象に指定

8月19日

高市首相「大変残念」。弱腰との批判も

8月26日

赤根所長が日本に「最大限の努力」を要請

9月21日

茂木外相がルビオ氏と約10分、ICC制裁で意見交換

米国はなぜICCの所長を制裁対象にしたのか

米国の同意なしに、米国や同盟国の政府関係者を訴追しようとする動きに関わったことを理由にしています。

日本経済新聞によると、米国務長官は、赤根氏らがICCの管轄権に同意していない国の政府関係者の訴追などに関与していることを制裁の理由に挙げました(日本経済新聞)。米国はICCに加わっておらず、ICCの捜査が米国や同盟国に及ぶことに反発してきました。赤根所長はこれに対し、「正義は常にその対極にあるものに優越する。信念を貫く」と述べ、訴追を続ける姿勢を示しています(日本経済新聞)。日本はICCに加盟しており、日本人の所長が同盟国の制裁を受けるという、日本政府にとって扱いの難しい構図になっています。

図のとおり、制裁から約1か月たって、ようやく外相同士が直接この問題を話した形です。ICCを巡る別の動きとして、太平洋の島国の脱退表明は「ナウルがICC脱退表明 理由と発効時期、トランプ氏との関係」で整理しています。

なぜ「前さばき」と言われるのか

読売新聞が、ICC問題を外相レベルで協議することで一致した点を、首脳間の火種を防ぐ「前さばき」と評価したためです。

読売新聞によると、茂木氏はルビオ氏と接触した際、日米で溝があるICCの問題を外相レベルで協議することで一致しました。記事は、ICC問題が首脳レベルの火種にならないよう前さばきをするなど、豊富な人脈と外交経験を発揮したと評価しています。これは読売新聞の評価で、ICC問題が首脳会談でどう扱われたかについての政府の説明は伝えられていません。首相は翌22日にニューヨークでトランプ大統領と会談しており、その場では台湾問題など対中認識のすり合わせが焦点になりました(時事通信)。

日米韓外相会合の共同声明では何を確認したのか

中国を念頭に、輸出規制などの経済的威圧に「断固として反対する」と表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認しました。

毎日新聞によると、茂木氏は9月21日(日本時間22日)、ルビオ国務長官、韓国の趙顕(チョヒョン)外相と会合を開きました。共同声明では、恣意的な輸出規制などの経済的威圧に反対し、「自由で透明な貿易を維持し、重要なサプライチェーン(供給網)を確保することを決意した」と強調しています。北朝鮮の完全な非核化、力による現状変更への反対、北極での3か国の協力継続も盛り込みました(毎日新聞)。

この会合は9月24日の米中首脳会談の直前に開かれました。米中会談ではトランプ氏が米中を第2次大戦の「同盟国」と表現し、日本政府内に困惑が広がりました。その経緯は「トランプ氏「大戦時の同盟国」発言とは」で整理しています。

なぜ首相の外交を茂木外相が補っているのか

読売新聞によると、首相の首脳外交は歴代内閣と比べて控えめで、その穴を外相が埋めているためです。

読売新聞は、首相が国会日程の組まれていない8月中の外遊を見送るなど、首脳外交は歴代内閣に比べて控えめだと書いています。茂木氏はその穴を埋めるため、4月以降、アフリカや中南米、欧州などで精力的に外交を展開してきたとしています。首相も茂木氏の実務能力の高さに一目置いているといいます。この点は読売新聞の報道で、ほかの報道では確かめられていません。

首相と外相の役割の分け方を、今回のニューヨークでの動きから整理すると次のとおりです。

担い手 ニューヨークでの主な役目 出典
高市首相 国連総会の一般討論演説、日米・ウクライナ・トルコとの首脳会談、グテレス国連事務総長との会談(滞在は1日強) 日本経済新聞・時事通信・毎日新聞
茂木外相 日米韓・G7・G4などの外相会合、各国外相との個別会談、ICC問題の協議 読売新聞・毎日新聞・テレビ朝日

表のとおり、首相は演説と首脳級の会談を担い、外相級の多国間会合や個別の調整は茂木氏が受け持っています。毎日新聞によると、首相はグテレス事務総長に安保理改革を訴え、トルコのエルドアン大統領とも会談しました(毎日新聞)。ゼレンスキー大統領とは就任後初めて対面で会談しています(日本経済新聞)。首相の国連演説の焦点は「高市首相の国連演説 拉致・ICC・日米会談の焦点」で整理しています。

茂木外相は「ポスト高市」を狙っているのか

読売新聞は、茂木氏はポスト高市を見据えてきたが、当面は首相を支えながら機会をうかがうとの見方を伝えています。

読売新聞によると、茂木氏は「ポスト高市」を見据えてきましたが、9月の内閣改造で続投が決まり、閣内にとどまりました。来年の自民党総裁選に立候補すれば首相と衝突することになりかねず、当面は首相を支えながら後継の機会をうかがうとの見方が強まっているとしています。

内閣改造で茂木外相はどうなったのか

9月17日の内閣改造で外相に留任しました。時事通信は改造前、続投の理由を継続性の重視と報じていました。

NHKは、茂木外相が留任すると報じています(NHK)。時事通信は改造前の段階で、茂木外相や片山財務相の続投を調整していると伝え、その理由を継続性の重視と説明していました(時事通信)。改造後の閣僚の顔ぶれは「第2次高市改造内閣の閣僚名簿」にまとめています。

(編集部分析)今回の名代外交は、首相の外交の少なさを補う役割と、茂木氏自身の存在感を示す場の両方を兼ねていました。ICC問題のように首相が前面に出にくい論点を外相が引き取る形は、政権にとって都合がよい一方で、赤根所長への制裁に日本がどこまで踏み込むのかという問いは残ったままです。

今後、何に注目すればよいのか

ICC制裁で日本が米国に何を求めるのかと、茂木外相の次の外遊、来年の総裁選に向けた動きの3つです。

1つ目は、外相レベルで協議するとしたICCの問題で、日本が赤根所長への制裁解除を求めるのか、立場の説明にとどめるのかです。9月21日の面会では、やりとりの具体的な中身は発表されていません。2つ目は、首相の外遊が控えめなまま、茂木外相が引き続き多国間の場を受け持つのかどうかです。3つ目は、来年の自民党総裁選に向けて、茂木氏が閣内で首相を支える姿勢を続けるかどうかです。

茂木外相の「名代」外交のよくある質問

今回の外交日程について、調べられることの多い疑問に答えます。

Q. 「名代」は政府が正式に任命した役目ですか?

A. 正式に任命したという発表はありません。「名代」は読売新聞が茂木外相の役回りを表した言葉で、外相としての通常の外交日程をこなしたものです。

Q. 日本は赤根所長への制裁に抗議したのですか?

A. 抗議したという報道はありません。首相は「大変残念」と述べ、茂木外相はルビオ国務長官に法の支配を重視する立場を説明したとみられますが、中身は発表されていません。

Q. 茂木外相のニューヨーク訪問はいつからいつまでですか?

A. 共同通信によると、9月20〜25日の日程です。茂木外相は9月18日の会見で、国連総会への出席のため訪米すると発表していました。

続報を追うときは、ICCを巡る日米のやりとりは外務省の「会談・会見」の発表ページと外務大臣の記者会見記録で、総裁選への動きは本人の会見や自民党の公式発表で確かめるのが確実です。

参考情報

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