【9/26】トランプ氏「大戦時の同盟国」発言とは|習氏の「日本軍国主義」、高市首相と台湾の反応、日本への影響

トランプ米大統領が、中国の習近平国家主席を迎えたホワイトハウスの式典で、米国と中国を第2次世界大戦の「同盟国」と表現しました。習氏はその日の夕食会で「中米両国人民は協力して日本軍国主義の侵略者と戦った」と応じ、日本を名指しする形で米中の近さを演出しました。

米大統領が中国の指導者を前に米中を「同盟国」と呼ぶのは異例で、日本政府内からは困惑の声が出ています。高市早苗首相は「日米は非常に強い絆で結ばれた同盟国」と述べ、日米同盟の強さを強調しました。この記事では、トランプ氏の「大戦時の同盟国」発言が何だったのか、なぜ問題視されるのか、日本政府と台湾がどう受け止めたのか、日本にどんな影響が出うるのかを、報道の出典つきで整理します。

この記事でわかること

  • 発言の中身:トランプ氏は9月24日の歓迎式典で、共通の利益の追求が「第2次大戦でわれわれを同盟国にした」と述べ、習氏は「日本軍国主義」と戦った歴史で応じました。
  • なぜ異例か:大戦中に米国と組んだのは蒋介石の中華民国で、いまの中華人民共和国は1949年に成立した別の政府です。
  • 日本と台湾の反応:高市首相は「日米は非常に強い絆で結ばれた同盟国」と述べ、台湾の大陸委員会は「米国と並んで戦ったのは中華民国」と反論しました。
目次

トランプ氏の「大戦時の同盟国」発言とは何だったのか

9月24日の習氏の歓迎式典で、トランプ氏が米中は第2次大戦で「同盟国」だったと述べた発言です。

習近平氏は約3年ぶりに訪米し、ワシントンのホワイトハウスでトランプ氏と会談しました(西日本新聞)。トランプ氏夫妻が空港で習氏夫妻を出迎えるなど、異例の厚遇の中で開かれた会談です。その歓迎式典のあいさつの中で、問題の発言が出ました。

歓迎式典で、トランプ氏は何と言ったのか

「共通の利益の追求が、多くの相違を乗り越えて両国民を結び付け、第2次世界大戦ではわれわれを同盟国にした」と述べました。

時事通信によると、トランプ氏はこの言葉で米中が第2次大戦で「同盟国」として共に戦ったと語りました(時事通信)。英語では「allies」という語が使われています(時事通信)。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、発言を「(common interests) even made us allies in World War II」と伝えています(SCMP)。

読売新聞によると、トランプ氏はあいさつで「第2次大戦で、我々が共に戦った偉業を思い出そう」とも述べています(読売新聞)。

米国人義勇兵「飛虎隊」にも触れたのか

触れました。トランプ氏は日本と戦った米国人義勇兵、通称「飛虎隊(フライング・タイガース)」に言及しています。

西日本新聞の社説は、トランプ氏が会談前の演説で中国を「第2次世界大戦時の同盟国」と呼び、日本と戦った米国人義勇兵に言及したと書いています。台湾の経済日報によると、トランプ氏は飛虎隊の貢献を振り返ったものの、彼らが中華民国の空軍とともに日本と戦った米国の飛行士だったことには触れませんでした(経済日報)。飛虎隊は、日米開戦前後に中華民国を支援した米国人の航空義勇部隊です。

聯合報によると、トランプ氏は夕食会のスピーチでも、中国の歴史と伝統を「孫子から孫中山まで」と表現しました(聯合報)。孫中山(孫文)は中華民国の建国の父にあたる人物です。

習近平氏は「日本軍国主義」発言で何と応じたのか

習氏は歓迎式典で「ファシズムの侵略」と戦った歴史を持ち出し、夕食会では日本を名指しして応じました。

時事通信によると、習氏は歓迎式典で、日本を念頭に「第2次大戦中、中米はファシズムの侵略に肩を並べて戦った」と述べ、「この歴史を決して忘れない」と強調しました。その夜の公式夕食会では「80年以上前、中米両国人民は協力して日本軍国主義の侵略者と戦った」と述べ、「血と炎の中で築かれた友情は世代を超えて受け継がれていく」と語っています(時事通信)。

聯合報によると、習氏は夕食会で、中米が「駝峰航路(ハンプ越え)」を開いたこと、抗日戦争の間に中国の軍民が数百人の米国人飛行士を救助し、数十万人の命を犠牲にしたことにも触れました(聯合報)。

9月24日の2人の発言を、場面ごとに並べると次のとおりです。

場面(9月24日・米国時間) 発言者 発言(報道による要旨)
歓迎式典 トランプ氏 共通の利益の追求が「第2次世界大戦ではわれわれを同盟国にした」
歓迎式典 習氏 「第2次大戦中、中米はファシズムの侵略に肩を並べて戦った」「この歴史を決して忘れない」
会談前の演説 トランプ氏 日本と戦った米国人義勇兵(飛虎隊)に言及
公式夕食会 習氏 「80年以上前、中米両国人民は協力して日本軍国主義の侵略者と戦った」
公式夕食会 トランプ氏 中国の歴史と伝統を「孫子から孫中山まで」と表現

表のとおり、トランプ氏が「同盟国」という言葉で米中の歴史的なつながりを持ち出し、習氏がそれを「日本軍国主義」との戦いという形に具体化して返した流れです。日本経済新聞は、この流れを「習氏の抗日歴史観に危うい呼応」と見出しに取っています(日本経済新聞)。

なぜ「同盟国」発言は異例と言われるのか

大戦中に米国と組んでいたのは蒋介石の中華民国で、いまの中華人民共和国ではないからです。

読売新聞は、米中が同盟関係にあったのは中華人民共和国ではなく、蒋介石が率いた「中華民国の時代」だと指摘しています(読売新聞)。共産党が北京で中華人民共和国を建てたのは、大戦が終わったあとの1949年です。その中華民国の政府は、国共内戦に敗れて台湾へ移りました。

時系列を図にすると、次のようになります。

第2次大戦中

米国は連合国として、蒋介石の中華民国と組んで日本と戦った。飛虎隊も中華民国の空軍とともに戦った

1949年

共産党が北京で中華人民共和国を建国。中華民国の政府は台湾へ移る

2026年9月24日

トランプ氏が中華人民共和国の習氏を前に、米中を大戦時の「同盟国」と表現

図のとおり、大戦中の「同盟」の相手と、今回トランプ氏が向き合った相手は、国の名前も政府も違います。沖縄タイムスの社説も「歴史的事実として、この点は区別しなければならない」と書いています(沖縄タイムス)。

トランプ氏の発言の狙いはどう見られているのか

真意は明らかにされていません。関係を安定させるための外交的な演出や、中国へのリップサービスとの見方が出ています。

西日本新聞の社説は「トランプ氏の発言の真意は不明だ」としたうえで、11月の中間選挙を控えたトランプ氏には、支持率向上につながる経済的利益を中国から得る狙いもあったとみています。沖縄タイムスの社説は、過去の共通利益を取り上げることで、現在の対立を乗り越えて関係を安定させようと外交的に演出したのではないかと書いています。日本政府内では「中国へのリップサービスの一環」とみる見方が伝えられています(読売新聞)。

高市首相と日本政府は「同盟国」発言をどう受け止めたのか

高市首相は論評を避けつつ、「日米は非常に強い絆で結ばれた同盟国」と述べ、日米同盟の強さを強調しました。

高市首相は何と述べたのか

9月25日、首相官邸で「第三国間のやりとりで、その逐一にコメントすることはない」と記者団に語りました。

時事通信によると、首相は習氏の「中米両国は協力して日本軍国主義と戦った」との発言を念頭に、「日米は戦争はあったが和解を果たして関係を深め、今は非常に強い絆で結ばれた同盟国としてお互いに信頼し合える関係だ」と述べ、習氏の発言をけん制したと伝えています(時事通信)。テレビ朝日も、この「日米は強い絆で結ばれた同盟国」という言葉を見出しに取って報じています。

木原稔官房長官は記者会見で「米中関係が日本を含む国際社会の安定に資するものになることが重要だ」と述べるにとどめました(読売新聞)。

政府内では「リップサービス」と「心地よくない」の両方の声が出た

外務省内には「トランプ流のリップサービス」との見方がある一方、政府関係者は「心地よい発言ではない」と認めています。

時事通信によると、別の外務省関係者は「連合軍(連合国)という意味の方が正しい」と指摘しました。英語の「allies」には、軍事同盟の相手という意味のほかに、大戦の「連合国」という意味もあるためです。会談そのものについては、政府関係者が「サプライズはなさそう」、外務省関係者が「5月の米中会談と中身は変わっていない」と話しており、冷静な受け止めが大勢だとされています(時事通信)。

首相は会談の前に手を打っていたのか

首相は米中会談の直前の9月22日に、ニューヨークでトランプ氏と会談していました。狙いは譲歩を防ぐことだったと報じられています。

時事通信は、この会談の狙いを、対中認識を共有し、安易な譲歩に応じないようくぎを刺すためだったと報じています。官邸関係者は「首相から『台湾問題などで中国の言いなりにならないようにしてほしい』という話をした」と明かし、首相周辺は「台湾問題について日米は完全に擦り合わせができた」と強調しています。読売新聞によると、トランプ氏は日本の立場を「十分理解した」(外務省幹部)とされ、首相は速やかにトランプ氏と電話し、米中会談の内容について直接報告を受ける方向で調整しています。

日本政府の受け止めについて、よく出る疑問を1つ挙げておきます。

Q. 日本政府はトランプ氏に抗議したのですか?

A. 抗議したという報道はありません。高市首相は「第三国間のやりとり」として論評を避け、日米の同盟関係の強さを強調する形で応じています。

高市首相は抗議を表明せず、日米同盟の強さを強調する形で応じました。次は、大戦中の同盟相手だった中華民国、つまり台湾の反応を見ます。

台湾はトランプ氏の「同盟国」発言にどう反応したのか

大陸委員会は「米国と並んで戦ったのは中華民国」と反論し、外交部は飛虎隊への言及を前向きに受け止めました。

聯合報によると、中国政策を担う台湾の大陸委員会は、中国共産党の大戦の歴史観は歴史的事実をゆがめたものだと反論しました。1949年に成立した中華人民共和国は大戦中には存在せず、実際に米国と並んで戦ったのは中華民国だという主張です(聯合報)。

一方、台湾の外交部は9月25日、トランプ氏が当時の協力の歴史と飛虎隊の貢献を振り返ったことについて、米国が長年、東アジアと世界の平和と安定を重視してきたことの表れだと評価しました。そのうえで、台米の交流を引き続き深めていくと表明しています(経済日報)。

(編集部分析)台湾側は、発言の「中華人民共和国と同盟していた」という読み方を否定しつつ、飛虎隊の歴史そのものは自分たちの歴史として引き取ろうとしています。発言を米国批判にはつなげず、台米関係の話に置き直した対応とみられます。

米中首脳会談では、ほかに何が話し合われたのか

台湾問題、人工知能(AI)、貿易が主な論点で、習氏は米国に「台湾独立に反対」するよう求めました。

沖縄タイムスの社説によると、米国は従来「台湾独立を支持しない」と表現してきましたが、習氏はそこから一段と中国側の立場に寄るよう迫りました。同社説は、11月が期限だった貿易戦争の「休戦」をさらに2カ月延長したこと、AIを巡る対話の継続で一致したことも挙げています(沖縄タイムス)。

主な論点を、報道にもとづいて並べると次のとおりです。

論点 報じられた内容 日本との関わり
台湾 習氏が「支持しない」から「反対」へ踏み込むよう要求 首相は事前に「中国の言いなりにならないように」と要請
歴史 トランプ氏「同盟国」、習氏「日本軍国主義の侵略者と戦った」 日本を名指しした歴史認識の共有
AI 対話の継続で一致。規制を巡る考え方には隔たり 直接の言及は伝えられていない
貿易 11月期限の「休戦」をさらに2カ月延長(沖縄タイムス社説) 直接の言及は伝えられていない

表のとおり、日本に直接かかわるのは台湾と歴史の2つです。読売新聞によると、米側は24日の時点で会談の成果を公表しておらず、東シナ海や南シナ海への懸念をトランプ氏が習氏に伝えたとの見方は少ないとされています(読売新聞)。

米国内でも習氏の厚遇は批判されたのか

批判されました。与党・共和党の議員からも、習氏を厚遇しすぎだという声が出ています。

読売新聞によると、共和党のトム・ティリス上院議員は米CBSニュースのインタビューで、トランプ氏について「圧制者と過ごす時間が増え、民主主義国のリーダーと過ごす時間が減っている傾向を心配している」と語りました。上院外交委員会のジーン・シャヒーン上院議員(民主党)らは「トランプ氏は同盟国への威圧に立ち向かうのではなく、豪華な晩さん会を開くことを選んだ」とする声明を出しています。ワシントンで同じ日に起きた抗議デモについては「習近平訪米に抗議デモ|王丹氏の公開書簡、プーさん姿、晩さん会に届いた「香港に自由を」」で詳しく整理しています。

「同盟国」発言は日本にどんな影響があるのか

中国が発言を「抗日」の宣伝に使い、日本への歴史批判を強める材料にされるおそれがあると指摘されています。

読売新聞によると、日本政府は、中国がトランプ氏の言動を利用して自国に都合の良い発信を強める展開を警戒しています。首相は先の国連演説で、第2次大戦の敗戦国を対象にした国連憲章の「旧敵国条項」について「早急な削除」を訴えたばかりで、これに反発する中国が今回の発言を使う余地があるためです(読売新聞)。旧敵国条項の削除要求に中国がどう反論したかは「旧敵国条項の「現実的意義」とは 中国が高市首相の削除要求に反論」で整理しています。読売新聞は別の記事で、トランプ氏の発言は「抗日」を巡る中国の言説を「補強する材料となる恐れがある」とも書いています。

どんな場面で使われるおそれがあるのか

日本の台湾有事を巡る姿勢や、旧敵国条項の削除を求める日本の主張に反論する場面が考えられます。

読売新聞によると、中国は台湾有事を巡る日本への批判を続けています。西日本新聞の社説は、トランプ氏の融和的な姿勢を読み取った中国が、日本への「新型軍国主義批判」をエスカレートさせる恐れがあると書きました。時事通信は、トランプ氏がかねて米中を「G2」と呼んでいることから、日本の頭越しの米中接近を懸念する声があったと伝えています。

(編集部分析)今回の発言は、それ自体で日米同盟の条約上の中身を変えるものではありません。ただ、米大統領が中国の指導者の前で大戦の「同盟」を語り、その直後に中国側が「日本軍国主義」を名指ししたことで、米中が日本を共通の過去の敵に置く構図が公の場で示された点は軽く見られません。日本政府や各紙が警戒しているとおり、中国側が今後、日本批判の発信でこの発言を引用する材料になりうると評価できます。日本にとっては、大戦後に和解して同盟を結んだという事実と、大戦中に米国と組んだのは中華民国だったという事実を、国際社会に向けて具体的に説明していくことが課題として残ります。

習氏の動静や中国指導部の内部については「習近平に何が起きているか|動静異変と軍中枢の動揺を検証」で整理しています。

今後、何に注目すればよいのか

首相とトランプ氏の電話会談の中身と、年内にあと2回開かれる可能性がある米中首脳会談です。

読売新聞によると、米中首脳会談は年内にあと2回開かれる可能性があり、日本政府はさまざまなレベルで米側と接触を重ね、連携を強めていく方針です。沖縄タイムスの社説は、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や12月の20か国・地域(G20)首脳会議などの場を使って、米中首脳が協議を重ねる見通しだと書いています。

見るべき点は3つあります。1つ目は、首相がトランプ氏から受ける米中会談の報告で、台湾について米国の表現が「支持しない」のまま保たれているかです。2つ目は、中国が今回の「同盟国」発言を、日本批判の公式な発信で繰り返し使うかどうかです。3つ目は、次の米中会談でトランプ氏が歴史に触れたとき、日本と戦った相手を「中華民国」と区別して語るかどうかです。

トランプ氏の「同盟国」発言のよくある質問

今回の発言について、調べられることの多い疑問に答えます。

Q. トランプ氏は「中国は今の同盟国だ」と言ったのですか?

A. いいえ。報道によると、第2次世界大戦のときに米中が「同盟国」だったという過去の話として述べたもので、今の中国を同盟国と呼んだものではありません。

Q. 旧敵国条項とは何ですか?

A. 国連憲章のうち、第2次大戦で連合国の敵だった国を対象にした規定です。高市首相は国連演説でこの条項の早急な削除を訴えていました。

Q. 今回の発言で日米同盟の中身は変わるのですか?

A. 同盟の取り決めが変わったという発表はありません。日本政府は年内の米中会談に向けて、米側との接触を重ねて連携を強める方針です。

発言の受け止めは、今後の米中会談と日米の電話会談で変わる可能性があります。新しい動きがあれば出典とあわせて確認してください。

参考情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次