【9/29】パデュー大使「トランプ氏が習主席に武器購入を打診」とは|本人と国務省は否定、台湾140億ドルは棚上げ

米国のデビッド・パデュー駐中国大使が2026年9月27日、米FOXニュースのインタビューで「トランプ大統領は習近平国家主席に、米国製の武器を買いたいかと尋ねたことがある」と明かしました。これに対し米国務省は「米国の法律は中国への武器売却を禁じており、提案も計画もない」と説明し、トランプ大統領本人も翌28日に「その件は話し合っていない」と否定しています。大使の発言と、大統領・国務省の説明が食い違った形です。

この記事では、パデュー大使が何を語ったのか、米政府がどう否定したのか、米国がそもそも中国に武器を売れるのか、そして約140億ドル規模とされる台湾向けの武器売却がなぜ止まっているのかを、時事通信・AFP通信・日本テレビ・読売新聞・中央日報・風傳媒の報道と米国の法令をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 何が起きたか:パデュー駐中国大使が、トランプ大統領が習主席に米国製武器の購入を持ちかけたことがあると発言しました。
  • 米政府の説明:国務省は「法律が中国への武器売却を禁じている」と否定し、トランプ氏も「話し合っていない」と述べました。
  • 台湾への影響:約140億ドル規模の台湾向け武器売却案は5月の北京会談の後に棚上げされたままで、台湾では米国への不安が出ています。
目次

パデュー大使の武器発言とは トランプ氏は習主席に何を尋ねたのか

パデュー大使は、トランプ大統領が習主席に「米国製の武器を買いたいか」と尋ねたことがあると、9月27日のFOXニュースで述べました。

AFP通信によると、パデュー大使はFOXニュースの番組で「トランプ大統領は『われわれは世界中の人々に武器を売っている』と言い続けている。実際、ある時点で習主席に『買いたくないか』と持ちかけた」と語りました。米地方局FOX19の報道では、大使はその前置きとして、トランプ大統領は台湾について「これまで見た誰よりも強い姿勢だ」とも述べています。

発言はいつ、どの会談についてのものか

大使は、購入を持ちかけたのがどの会談で、いつだったのかを明らかにしていません。

時事通信によると、トランプ大統領と習主席は2025年10月以降、9月24日のワシントンでの首脳会談を含めて計3回会談しています。AFP通信は、台湾への武器売却をめぐる中国側の懸念に応じる形で持ち出された話で、先週の習主席の訪米時にも再び取り上げられたと伝えています。ただし、どの会談で、どのような言い方だったのかは、大使の発言からは特定できません。

大使は台湾をめぐる会談すべてに同席していた

パデュー大使は、米中首脳が台湾問題を議論した会談にはすべて同席していたと述べています。

時事通信によると、大使はそのうえで「大統領の姿勢は強固だ。『一つの中国』政策に変更はないことを極めて明確にしてきた」と説明しました。読売新聞は、大使が米国は台湾の独立を支持せず、台湾への威圧も支持しないと強調したと伝えています。

トランプ大統領と国務省は武器発言をどう否定したか

トランプ大統領は「話し合っていない」と否定し、国務省は「法律で中国への武器売却は禁じられている」と説明しました。

トランプ氏「話し合っていない」、一方で「良い案かもしれない」

トランプ大統領は否定しながらも、中国が米国製の武器を買いたがるだろうとも述べ、話の余地を残しました。

日本テレビによると、トランプ大統領は9月28日、大使の発言について問われ「そんな話は聞いたことがない」としたうえで、「我々はより良い装備をつくっているから、彼らは買いたいだろう。もしかしたら良い案かもしれない」と述べました。そのうえで「その件については話し合っていない」と否定し、大使は台湾について話していたのだろうとの見方を示しています。習主席との首脳会談については「素晴らしかった」とし、「1から10の評価でいえば12」と自賛しました。

国務省「法律は中国への武器売却を禁じている」

国務省は、米国の法律が中国への武器売却を禁じており、売却の提案も計画も存在しないと説明しました。

読売新聞によると、国務省の当局者は「米国の法律は中国への武器売却を禁じており、売却の提案や計画は一切ない」と述べました。FOX19も、国務省が「米国の法律は中国への武器売却を禁じており、中国に武器を売る提案も計画もない」との声明を出したと伝えています。

3者の発言を並べると、次のようになります。

発言者 日付(現地) 主な発言(報道の表現)
パデュー駐中国大使 9月27日 トランプ大統領はある時点で習主席に(米国製の武器を)「買いたくないか」と持ちかけた
トランプ大統領 9月28日 「その件については話し合っていない」/「彼らは買いたいだろう。もしかしたら良い案かもしれない」
米国務省 9月28日 「米国の法律は中国への武器売却を禁じており、売却の提案や計画は一切ない」

表のとおり、国務省は「法律上できない」と制度で否定し、トランプ大統領は「話し合っていない」と事実を否定しつつ、案そのものは否定していません。大使・大統領・国務省の3者で、説明の軸がそろっていないことがわかります。

(編集部分析)同盟国や台湾から見れば、否定の言葉よりも「良い案かもしれない」という一言のほうが重く響きます。米政府内で説明がそろわない状態そのものが、台湾をめぐる米国の意思を読みにくくしており、周辺国にとっては不安材料になると考えられます。

米国は中国に武器を売ることができるのか

1990年に成立した米国の法律で対中国の武器輸出の許可は停止されており、現状では売ることはできません。

FOX19によると、米国が中国に武器を売ったのは1980年代が最後です。その後、1989年の天安門事件を受けて1990年に成立した法律(Pub. L. 101-246 第902条)は、米国軍需品リストに載る防衛物資の中国向け輸出許可を「引き続き停止する」と定めました。この条文は、米コーネル大学法科大学院が公開している米国法典(22 U.S.C. §2151)の注記に収録されています。国務省が「米国の法律は中国への武器売却を禁じている」と説明した背景には、この規定があります。

ただし同じ条文は、大統領が議会に対して、停止の解除が「米国の国益にかなう」と報告すれば停止を解けるとも定めています。大統領が売却を決めるには、少なくとも議会への正式な報告という手続きが必要になります。

一方、台湾については、1979年の台湾関係法(22 U.S.C. §3302)が、台湾が十分な自衛能力を維持するために必要な防衛物資と役務を米国が提供すると定め、その内容は大統領と議会が台湾の必要に応じて決めるとしています。AFP通信も、米国は法律上、自衛目的の武器を台湾に供給することが義務付けられていると伝えています。

相手 米国の武器売却の扱い 根拠
中国 輸出許可を停止(最後の売却は1980年代)。解除には大統領から議会への「国益」報告が要る Pub. L. 101-246 第902条(22 U.S.C. §2151 注記)・国務省の説明
台湾 防御的な武器を提供すると法律で定める 台湾関係法(22 U.S.C. §3302)

(編集部分析)国務省が即座に法律を持ち出したのは、大統領の意向だけでは売却を決められないことを内外に示す狙いがあったと読めます。米国の法律は、中国には売らず、台湾には自衛のための武器を渡すという方向で組み立てられています。大統領の口から「中国に売る」という発想が出たこと自体、この法律の前提と逆向きの話であり、議会の歯止めがどこまで働くかが問われる場面だと評価できます。

台湾向け140億ドルの武器売却はなぜ棚上げされているのか

5月の北京での米中首脳会談の後、トランプ大統領が「一時的に棚上げ」と表明し、そのまま止まっています。

風傳媒によると、この売却案は約140億ドル(約2.2兆円)規模で、国務省の当局者がまとめ、年初には超党派の議員から予備的な同意を得ていました。しかし2026年5月、トランプ大統領が北京で習主席と会談した後に売却を「一時的に棚上げ」すると発表し、その後は国務省内で止まったままになっています。FOX19も、140億ドルの売却案が5月の北京首脳会談の後に止められたと伝えています。

棚上げの理由について、トランプ大統領が中国との取引のためだと説明したとする一次的な記録は確認できません。ただしFOX19によると、トランプ大統領は以前、台湾への武器売却を「非常に良い交渉材料」と表現したことがあります。

台湾向けの武器売却をめぐる主な動きを日付順に並べます。

時期 出来事 出典
2025年12月 米国が台湾への111億ドル規模の武器売却を承認(1979年以降で最大) AFP通信
2026年初め 約140億ドルの売却案に超党派の議員が予備的に同意 風傳媒
2026年5月 北京での米中首脳会談の後、トランプ大統領が売却を「一時的に棚上げ」と表明 風傳媒・FOX19
2026年9月24日 ワシントンで米中首脳会談。習主席が台湾への武器売却の中止を求める 時事通信・中央日報
2026年9月27日 パデュー大使が、トランプ大統領が習主席に武器購入を持ちかけたと発言 AFP通信・時事通信
2026年9月28日 国務省とトランプ大統領が相次いで否定 読売新聞・日本テレビ

111億ドルは、AFP通信が昨年12月に承認された台湾向け売却の規模として伝えた数字です。140億ドルは、それとは別に準備され、5月以降に止まっている売却案の規模で、両者は別の案件です。

台湾の反応は「できるだけ早く」と「政策に変更はない」

台湾の駐米代表は売却案の早期実現を求め、国防部長は米側から政策に変更はないと説明を受けていると述べました。

風傳媒によると、台湾の兪大㵢駐米代表は、武器売却のパッケージが「できるだけ早く」届くことを望むと述べました。顧立雄国防部長は、米側から「米国の台湾政策に変更はない」との説明を繰り返し受けていると説明しています。風傳媒は、大使の発言をきっかけに台湾で米国への不信が広がることへの懸念が出ていると伝えています。

(編集部分析)台湾の防衛に必要な装備が、米中首脳の間の駆け引きで止まっている状態は、台湾の人々にとって深刻な不安の種です。台湾海峡の安定は日本のシーレーンと南西諸島の安全に直結しており、台湾向けの売却の行方は日本にとっても他人事ではないと考えられます。

習主席は首脳会談で台湾について何を求めたか

習主席は9月24日の首脳会談で、台湾への武器売却の中止と、台湾独立に「反対」と明言することをトランプ大統領に求めました。

中央日報によると、習主席はワシントンでの首脳会談で、米国による台湾への武器売却の中止を要求し、台湾問題を「慎重に処理」するよう強調しました。さらに、台湾独立について米国がこれまでの「支持しない」から一歩進めて「反対」の立場を明確にするよう求めたとされます。中央日報は、トランプ大統領がこの「反対」への転換には応じず、「中国も米国製の武器を少し買う意思はないか」と冗談めかして応じたと伝えています。

AFP通信も、習主席が訪米中に台湾問題での「慎重さ」を警告したと報じています。中央日報は、パデュー大使が明かした問いかけを、習主席の台湾への圧力に対するトランプ流の切り返しとして報じています。

(編集部分析)中国が求めているのは、台湾への武器売却を止めさせ、米国に台湾独立への「反対」を言わせることです。力による現状変更を否定しない国に対し、武器の売り買いを冗談の種にすること自体、台湾海峡の緊張を軽く見ているとの受け止めを生みかねません。中国共産党の要求と、台湾に暮らす人々の安全とを、同じ交渉の卓に並べてはならないと考えられます。

パデュー大使の武器発言は日本にとって何を意味するか

台湾の防衛が米中の取引材料に見えることと、米国の対中姿勢が読みにくくなったことの2点が日本の問題です。

9月29日15時時点で、日本政府がパデュー大使の発言について公式に見解を示した記録は確認できていません。一方で、同じ週には中国の王毅外相が北京で岩屋毅前外相と会談し、高市首相の台湾有事をめぐる答弁の是正を求めています。この会談の中身は「王毅外相が台湾発言の是正要求」でまとめています。

また、9月24日の米中首脳会談では、トランプ大統領が第2次大戦の米中を「同盟国」と呼び、両国の成果文書に「非核化」の文言が入らなかったことも注目されました。こうした流れは「トランプ氏「大戦時の同盟国」発言とは」と「米中の成果文書から「非核化」が消えた」で取り上げています。国連の場で中国が旧敵国条項の削除に「断固反対」した件は「旧敵国条項で日中朝が答弁権の応酬」で整理しています。

(編集部分析)米中が首脳同士で接近するほど、台湾と日本の安全保障が「取引の外」に置かれる保証はなくなります。日米同盟は日本の防衛の柱であり続けますが、同盟国の大統領の一言で台湾向けの装備が止まる現実を見れば、日本が自らの防衛力を積み上げ、南西方面の備えを自分の手で固めることの意味は一段と大きくなっていると評価できます。

(編集部分析)同時に、米国には議会と法律という歯止めがあります。国務省が即座に「法律が禁じている」と打ち消したことは、米国の制度が大統領の思いつきを抑える方向に働いた例でもあります。日本としては、大統領個人の発言に一喜一憂するのではなく、米議会や国務省との対話の厚みを増やし、台湾関係法の趣旨が守られるよう働きかけることが現実的な道筋だと考えられます。

パデュー大使の武器発言をめぐる今後の焦点

焦点は、約140億ドルの台湾向け売却案が動き出すかどうかと、米議会がこの発言をどう扱うかの2点です。

FOX19によると、台湾への支援が遅れていることについては、共和党と民主党の双方の議員から懸念の声が出ています。売却案が再び動き出せば、大使の発言をめぐる不安はある程度打ち消されます。逆に棚上げが続けば、台湾で広がっている米国への不信はさらに強まる可能性があります。

この件の続きを自分で確かめたい場合は、①米国務省の定例記者会見、②米国防安全保障協力局(DSCA)が公表する対外武器売却の通知、③台湾の国防部と外交部の発表の3か所を見ると、売却案が動いたかどうかをいち早く確かめられます。日本政府の反応は、官房長官の定例会見で問われる可能性があります。

(編集部分析)台湾を守る装備が交渉の材料として扱われるかどうかは、日本の安全にも直結します。日本の読者としては、米中首脳の言葉の応酬よりも、実際に台湾へ武器が届くのかという「行動」を見ていくことが大切だと考えられます。

パデュー大使の武器発言をめぐるよくある質問

本文で触れきれなかった周辺の疑問に、短く答えます。

Q. パデュー大使の名前は「パーデュー」と書かれることもありますか?

A. はい。時事通信や日本テレビは「パデュー」、AFP通信は「パーデュー」と表記しています。どちらも同じ人物(David Perdue)です。

Q. 中国は実際に米国製の武器を買いたいと答えたのですか?

A. 報道では確認できません。大使が語ったのはトランプ大統領の問いかけだけで、習主席がどう答えたかは明らかにされていません。

Q. 対中国の武器禁輸は、ヘリコプターなどにも及びますか?

A. 及びます。Pub. L. 101-246 第902条は、停止の対象となる米国軍需品リストの防衛物資に「ヘリコプターとその部品を含む」と明記しています。

続報が入り次第、この記事に追記します。出典は下の参考情報にまとめています。

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