【10/8】高市首相を中国が呼び捨て|郭嘉昆氏に外務省が申し入れ、意図的か

中国外務省の郭嘉昆(グオ・ジアクン)副報道局長が、2026年9月30日の定例記者会見で高市早苗首相を肩書なしの「高市早苗」と呼び捨てにしました。日本の外務省は10月7日、「一国の指導者にしかるべき敬意を払うことは国際儀礼上当然」として中国側に申し入れたと明らかにしています。

この記事では、呼び捨てがどの場面で起きたのか、8月にもあった前例、日本政府の申し入れと中国側の答え、そして「意図的か」という見方までを、報道された事実と発言者を分けて整理します。

この記事でわかること

  • 何があったか:9月30日、郭嘉昆副報道局長が小泉防衛相の発言への質問に答える中で、高市首相を「高市早苗」と呼んだ
  • 日本の対応:北村俊博外務報道官が10月7日、敬意を払うのは国際儀礼上当然だとして中国側に申し入れたと公表した
  • 今後の焦点:8月にも同じ例があり、香港紙は意図的と分析。中国外務省は10月8日、具体的なコメントを避けた
目次

中国外務省は高市首相をどう呼び捨てにしたのか

郭嘉昆副報道局長が9月30日の会見で、首相の肩書を付けずに「高市早苗」とフルネームだけで呼びました。

読売新聞によると、郭氏は小泉進次郎防衛相の発言について見解を求められた際、首相を呼び捨てにしました(読売新聞)。共同通信の配信記事によると、香港紙の星島日報が10月2日にこれを報じ、中国外務省がサイトに載せた会見録も呼び捨てのままになっていました(秋田魁新報(共同通信配信))。

きっかけは小泉防衛相の核・原潜発言への質問

呼び捨ては、小泉防衛相が核兵器や原子力潜水艦の保有を議論から外すべきでないと述べた件への質問の場面でした。

読売新聞によると、小泉防衛相は9月28日、国家安全保障戦略など安保3文書の改定をめぐり、核兵器や原子力潜水艦の保有について、タブーを設けず選択肢を排除しないで議論すべきだという考えを示していました。郭氏はこの発言への見解を問われ、日本政府の対応を批判する文脈の中で首相の名前を出しています。批判の中身そのものより、首相の呼び方が日本で大きく報じられる形になりました。

(編集部分析)安保3文書の改定は、日本がこれからの防衛の形を自分で決めるための作業です。核や原子力潜水艦を「議論から外さない」という発言は、保有を決めたものではなく、検討の幅を狭めないという意味にとどまります。中国側がこの段階から強く反応したこと自体が、日本の防衛論議が自前の判断で進むことへの警戒の表れとみることができます。

郭嘉昆氏の肩書は「副報道局長」と「報道官」で表記が割れる

読売・AFP・テレビ朝日は「副報道局長」、TBSは「報道官」と書いており、同じ人物を指しています。

中国外務省では、定例会見に立つ報道官の多くが報道局の局長・副局長を兼ねています。日本の報道でも媒体によって呼び方がそろっていないため、この記事では読売新聞・AFP通信などに合わせて「副報道局長」と書きます。肩書の違いは、発言の重みや出来事の中身を変えるものではありません。

中国外務省が高市首相を呼び捨てにしたのは初めてか

初めてではありません。8月17日にも、別の林剣副報道局長が会見で高市氏を呼び捨てにしていました。

共同通信の配信記事によると、林剣氏は8月17日、高市首相が全国戦没者追悼式で読んだ式辞について問われた際に呼び捨てにしました。J-CASTニュースが紹介したテレビ朝日系の番組でも、「高市政権への批判を強める際には呼び捨てにしている可能性がある」という分析が取り上げられています(J-CASTニュース)。一方、TBSは、中国外務省がこれまで高市氏を「高市首相」などと呼んできたと伝えています。

報道に出た日付を順に並べると、次のとおりです。

日付 誰が 何をしたか
8月17日 林剣 副報道局長(中国外務省) 戦没者追悼式の式辞を問われ、高市氏を呼び捨て
9月28日 小泉進次郎 防衛相 核兵器・原潜の保有も「選択肢を排除せず議論すべき」と発言
9月30日 郭嘉昆 副報道局長(中国外務省) 小泉氏の発言への質問に答える中で「高市早苗」と呼び捨て
10月2日 星島日報(香港紙) 呼び捨てを報じ、意図的だったと分析
10月7日 北村俊博 外務報道官(日本) 中国側に申し入れたと会見で公表
10月8日 毛寧 報道官(中国外務省) 申し入れを問われ、具体的なコメントを避けた

8月と9月の2回とも、高市政権を批判する場面で起きている点が共通しています。次に、日本政府がこれにどう応じたのかを見ます。

日本の外務省は中国にどう申し入れたのか

北村俊博外務報道官が10月7日の会見で、敬意を払うのは国際儀礼上当然だと述べ、中国側に申し入れたと明らかにしました。

AFP通信によると、北村氏は定例会見で「立場の違いがあっても、一国の指導者にしかるべき敬意を払うのは、国際儀礼上当然のことだ」と述べ、「こうした立場は中国に対してもしかるべく申し入れを行っている」と説明しました(AFPBB News)。読売新聞も同じ趣旨を伝えています。

申し入れの細かい中身は公表されていない

いつ、どの窓口から、どんな言葉で伝えたのかは明らかにされていません。外交上のやり取りとして扱われています。

テレビ朝日によると、外務省幹部は「今後もバランスを見極めて反応していく」との考えを示しています(テレビ朝日)。抗議を大きくしすぎず、かといって黙認もしない、という線を探っている様子がうかがえます。

(編集部分析)外務省が「抗議」ではなく「申し入れ」という言葉を選び、国際儀礼という誰も否定しにくい物差しを持ち出した点は、相手と同じ土俵に下りずに筋を通す対応と評価できます。呼び捨てに呼び捨てで返せば、日本側も品位を落とすことになります。礼を尽くす側に立ち続けること自体が、国際社会に向けた日本の発信になると考えます。

中国外務省は日本の申し入れにどう答えたのか

毛寧報道官は10月8日の会見で、中国の立場は繰り返し明らかにしていると述べるにとどめ、具体的に答えませんでした。

TBS NEWS DIG(10月8日配信)によると、日本の申し入れについて問われた毛寧氏は「中国側は、現在の中日関係に対する立場をすでに繰り返し明らかにしている」と答えました。呼び捨てが意図的だったのかどうか、今後も同じ呼び方を続けるのかといった点には触れていません。

(編集部分析)謝罪も訂正もせず、言い間違いだったとも説明しない対応は、呼び方を変える考えが今のところ無いと読むのが自然です。ただし、これは中国共産党政権の外交当局としての振る舞いであり、中国の人々一般の対日感情と同じものとして扱うべきではありません。

呼び捨ては意図的なのか、言い間違いなのか

中国側は説明していませんが、香港紙や日本の識者からは「意図的だ」とする見方が出ています。

共同通信の配信記事によると、星島日報は「中国外務省は言葉遣いに細心の注意を払っている」として言い間違いではないと分析し、「中日関係が改善の兆しを見せるどころか、火に油を注いでいる」と書きました。

柳澤秀夫氏「仮に敵対国でも儀礼的対応が基本」

ジャーナリストの柳澤秀夫氏は、中国政府内で意思統一された方針だとみつつ、日本は冷静に伝えるべきだと述べました。

J-CASTニュースによると、柳澤氏は10月8日放送のテレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」で「かなり意図的に呼び捨てにしているのだと思う」と話しました。そのうえで「仮に敵対国、あるいは関係がよくない国でも儀礼的な対応というものは基本的に必要」「同じ土俵に乗ってけんかをしても始まらないので、むしろ冷静にしかるべき場でしっかりと伝えていくしか方法はない」と述べています。

呼び捨てが意図的かどうかは、中国側が説明しない限り断定はできません。

(編集部分析)2回とも政権批判の場面で起き、会見録も呼び捨てのまま公開されている以上、偶然の言い間違いと見る材料は乏しいと考えます。

(編集部分析)外交当局の会見は、発言が公式記録に残り、対外的なメッセージとして受け止められる場です。そこで相手国の首脳の肩書を外すのは、言葉で格下に扱う意思表示として受け取られます。肩書を外すという小さな形で不満を示し、相手の反応を見る手法は、軍事や経済の圧力と比べて代償が小さく、繰り返し使いやすいものです。日本としては、一回ごとに過剰に反応するより、同じ例が積み重なっていることを記録し、必要な場面で国際社会に示せるようにしておくことが大切だと考えます。

日中関係はなぜここまで冷え込んでいるのか

2025年11月7日、高市首相が国会で台湾有事に触れた答弁をしたことが、冷え込みの起点とされています。

AFP通信によると、高市氏は衆院予算委員会で、台湾有事をめぐって日本が集団的自衛権を使える「存立危機事態」の具体例を問われ、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と答えました。日中関係はこの答弁以来、さらに冷え込んでいると伝えています。

流れを図にすると、次のようになります。

2025年11月
高市首相が台湾有事で「存立危機事態になりうる」と答弁
2026年8月17日
林剣副報道局長が呼び捨て
9月30日
郭嘉昆副報道局長が呼び捨て
10月7日〜8日
日本が申し入れ、中国は具体的に答えず

呼び捨ては今回だけではなく、日中関係の冷え込みが続く中で8月にも確認されています。

高市首相は所信表明で中国を「重要な隣国」と位置付けた

日本側は対話の扉を閉じておらず、高市首相は最近の所信表明演説で安定した関係を築く考えを示しています。

AFP通信によると、高市氏は所信表明演説で中国を「重要な隣国」と位置付け、両国の間に安定した関係を構築する考えを示しました。一方、星島日報は、11月に中国で開かれるAPEC首脳会議に合わせた日中首脳会談が行われる可能性は低いとみています(共同通信配信)。

台湾をめぐる中国側の要求については「王毅外相が台湾発言の是正要求|岩屋前外相との会談で何を語ったか」で、国連での応酬は「旧敵国条項で日中朝が答弁権の応酬」で整理しています。

この呼び捨てを日本はどう受け止めるべきか

感情的に言い返すより、礼を欠いた事実を記録し、外交の場で淡々と是正を求め続けることが日本の利益になります。

(編集部分析)国の指導者をどう呼ぶかは、その国の国民をどう扱うかの表れでもあります。選挙で選ばれた日本の首相を、政権批判の場面に限って肩書なしで呼ぶのは、日本国民が選んだ結果を軽んじる振る舞いと受け止められても仕方がありません。日本側が国際儀礼を根拠に申し入れたのは、主権国家として当然の対応と評価できます。

(編集部分析)一方で、ここで大きく騒ぐことが中国側の狙いに乗る結果になるおそれもあります。呼び捨てが話題になるほど、きっかけとなった小泉防衛相の核・原潜発言や、台湾有事の議論そのものから目がそれます。日本が問われているのは、呼び方への反発より、自国の安全保障をどう組み立てるかという本題を、中国の反応に左右されずに議論し続けられるかどうかです。

(編集部分析)訪日中国人の減少など、両国の往来にもすでに影響が出ています(「国慶節の訪日中国人激減|56.7%減の理由と出国規定」)。関係が冷えているときこそ、日本は礼を守る側に立ち、相手の非礼は事実として指摘する。その積み重ねが、国際社会での日本の信用になると考えます。

確認できていること・まだ分からないこと

呼び捨ての事実と日本の申し入れは確認できていますが、中国側の狙いと申し入れの細かな中身は分かっていません。

動画やSNSでは強い言葉で語られやすい話題です。読み違えないよう、報道で裏が取れている点と取れていない点を分けておきます。

項目 状況 根拠
9月30日に「高市早苗」と呼んだ 確認済み 読売新聞・AFP通信・共同通信
8月17日にも呼び捨てがあった 確認済み 共同通信
日本が中国に申し入れた 確認済み 北村外務報道官の会見
申し入れの日時・方法・文言 公表されていない 外交上のやり取りとして非公表
中国の謝罪・訂正 報じられていない 毛寧報道官は具体的に答えず
呼び捨ての狙い 中国側の説明なし 意図的とみるのは香港紙・識者の分析

今後の注目点は、中国外務省の会見で高市首相がどう呼ばれるか、そして11月のAPEC首脳会議に向けて日中の首脳が会う道筋が見えるかどうかです。(編集部分析)呼び方が「首相」に戻るかどうかは、中国側の対日姿勢を測る目安の一つになると考えます。

読者の方が今後の動きを追うなら、①中国外務省の定例会見で高市首相がどう呼ばれるか、②日本の外務報道官会見で追加の説明があるか、③11月のAPEC前後に日中首脳会談が設定されるか、の3点を確認すると、関係が改善に向かうのか悪化が続くのかを判断しやすくなります。

高市首相の呼び捨て問題のよくある質問

検索で多い疑問に、報道で確認できる範囲で答えます。

Q. 高市首相を呼び捨てにしたのは誰ですか?

A. 中国外務省の郭嘉昆副報道局長です。9月30日の定例会見で「高市早苗」と呼びました。8月17日には林剣副報道局長も呼び捨てにしていました。

Q. 日本政府は抗議したのですか?

A. 「申し入れ」を行いました。北村俊博外務報道官が10月7日の会見で明らかにし、一国の指導者に敬意を払うのは国際儀礼上当然だと述べています。

Q. 中国は謝罪しましたか?

A. 謝罪や訂正は報じられていません。毛寧報道官は10月8日、立場はすでに繰り返し明らかにしていると述べるにとどめました。

Q. なぜ呼び捨てにしたのですか?

A. 中国側は理由を説明していません。香港紙・星島日報や日本の識者は、政権批判の場面での意図的な呼び方だと分析しています。

中国外務省の会見や日本政府の対応に新しい動きがあれば、この記事に日付を付けて追記します。

参考情報

  • 読売新聞「中国の副報道局長が「高市早苗」と呼び捨て、「一国の指導者にしかるべき敬意を」と北村外務報道官が申し入れ」(2026年10月7日)https://www.yomiuri.co.jp/politics/20261007-GYT1T00236/
  • AFPBB News「日本、中国に申し入れ「一国の指導者に敬意払うのは当然」 高市首相呼び捨て問題」(2026年10月8日)https://www.afpbb.com/articles/-/3656668
  • 秋田魁新報(共同通信配信)「中国外務省、高市早苗と呼び捨て 9月30日の記者会見、意図的か」(2026年10月2日)https://www.sakigake.jp/news/article/20261002CO0087/
  • テレビ朝日「「高市早苗」と総理を呼び捨て 外務省が中国に申し入れ 香港メディアは意図的と分析」(2026年10月8日)https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000538700.html
  • J-CASTニュース「中国の高市首相呼び捨て…「仮に敵対国でも、儀礼的対応が基本的に必要」と柳澤秀夫さん」(2026年10月8日)https://www.j-cast.com/2026/10/08518387.html
  • TBS NEWS DIG「「立場をすでに繰り返し明らかにしている」中国外務省 高市総理“呼び捨て”に対する日本の申し入れについて具体的なコメントせず」(2026年10月8日)
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